第66章 返答は、また後日
木椰区ショッピングモールで雄英生徒とヴィラン連合のリーダーと思われる男が遭遇。
そんなニュースを見て、心配してくれたのか、電話をかけてきてくれた生徒が一人だけいた。
けたたましく鳴るスマホを見て、緑谷はドキィッと身体を強張らせる。
(女子…っ女子から通話…!?)
「…は、い!!?」
<あ、こんばんは。だいぶお腹から声出したね>
「ど、どうしたのこんな時間に。向さんから電話なんて珍しいよね…?」
<気になって。怪我はないの?>
淡々と、穏やかに言葉を紡ぐ彼女の声は。
昼間耳元で聞いたひどく不安定な死柄木の声とは、全くかけ離れている。
緑谷はベッドに座り、間近で初めて聞く彼女の声に少しずつ、身体の体温が上がっていくのを感じていた。
「怪我は、全然。クラスのみんなも傷つけられてないよ」
<……そっか>
「…あのさ…この前は、本当にごめん。嫌な思いさせたよね」
<…嫌な思い?あぁ大丈夫。あれは私が悪かったし>
「……。」
とんでもない、とは、言ってくれないんだな。
なんて勝手に残念がっている自分がどうしようもなく恥ずかしい。
あぁ、何か、話題を。
通話が切れてしまう。
でも咄嗟に話すことなんか思い浮かばない。
思考を巡らせたその瞬間、死柄木が楽しげに話していた言葉を思い出した。
ーーー知ってるか緑谷
「…話…」
<…ん?>
「あ、いや…今日死柄木と少し話す機会があったんだ。そこで変なこと言ってて」
<…変なって?>
「相手にもっと話していたいと思わせるには、自分が喋るより相手に喋らせた方が効果的なんだってさって。なんでヴィランがそんなことって思ったんだけど…深読みのし過ぎだよね。テレビで聞いたとか、きっとそんな話だよね」
その話をした時。
彼女の声が聞こえなくなった。
<…犯罪者にも、話していたい相手はいるんじゃない?>
「……え?」
予想外の返答に。
僕は一瞬、目を丸くした。
<…ほら、出久と話したくて話しかけてきたんだろうし。何話したのかはわからないけど>
「確かに……あ、のさ…」
<うん?>
「夏休み…その…轟くんにすごく誘われてたけど、その後どうなったの?」
<んー…女子でプール遊びする以外予定はいれてないなぁ>
「どうして?」