第66章 返答は、また後日
「でもまだ今じゃないよな…耳寄りな情報はお預けだ。仲間を増やすには、それ相応の企みってのが必要になるのさ。それでだ…おまえさ」
俺と、ヒーロー殺し。
何が違うと思う?緑谷。
そう低く問いかけてくるヴィランに、緑谷は答えた。
「…何が…違うかって…?………僕は……」
おまえの事は理解も、納得もできない。
けれどヒーロー殺しは、納得はできないけど、理解はできた。
少なくとも、あいつは壊したいが為に壊してたんじゃない。
「やり方は間違ってても、理想に生きようとしてた……んだと思う」
「…………は?」
まるで、ステインを死柄木よりも上位に位置づけたような緑谷の物言いに、一瞬。
やっていることは、お互い何も変わらないのに、と。
死柄木は殺気を募らせた。
(…理想に、生きる?)
何とも素晴らしい生き方じゃないか。
理想に生きて、人殺しを繰り返してきただけのくせに。
俺には理想が無いから、視線が集まらない?
そんなことが原因だとするなら、考え込むなんてとんだ時間の無駄だった。
(……理想なら、あるじゃないか)
俺の、始まりは。
「全部、オールマイトだ」
不気味な笑みを浮かべた死柄木に、緑谷がゾッと背筋を凍らせた直後。
そうかぁ…そうだよな…と呟く死柄木の指先に力が込められ、次第に緑谷の首を締め上げる。
「ああ話せて良かった!良いんだ!ありがとう緑谷!俺は何ら曲がることはない!この信念ならきっと!!やっぱり運命だ!!俺たちは出会うべくして出会った、共に在るべき存在なんだよ!!」
喜んでいるのか、怒っているのか。
不安定な声色で言葉を吐き続ける死柄木の手から逃れようと、呼吸がままならなくなってきた緑谷がバタバタと暴れ出す。
暴れるな、と脅迫してきた死柄木の影。
心配そうに緑谷を除き込む麗日と目が合った。
「デクくん?お友達…じゃない…よね…?」
手、放して。
困ったような笑みを浮かべて。
麗日がそんな言葉を口にした後。
死柄木の左手がパーカーのポケットの中で動いたのを見て、緑谷が声を荒げた。
「何でもないよ!大丈夫だから!来ちゃ駄目…!」
「連れがいたのか。ごめんごめん」
パッと笑って、両手を胸の前で広げてみせた死柄木は、ベンチから腰を上げて、歩き出す。
「じゃあ行くわ。追ったりしてきたらわかるよな?」