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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第8章 キミに近づきたい




『あーぁ、しょうがないなぁ天哉は。そんなこともあるよ、どんまい』
「なぜ僕がミスった風なんだ!君は自ら物を窓から放り投げていたじゃないか!」
『困ったなぁ、私可愛いお茶子と戦いたくないよ。それに触られて私を無重力状態にされると、本当に足手まとい以外の何者でもなくなる』
「足手まといにならないように頑張るんだろう!」
『あー…じゃあこうしよう』


絶体絶命の状況に自ら陥っている向は、特に焦る様子を見せることなく、ハリボテの核ミサイルに手を触れて、それを宙にふわりと浮かせた。


「…えっ、うちと一緒なん!?深晴ちゃん!」


と目を丸くする麗日に、向は笑って答えを返した。


『似て非なるものだよ、お茶子ちゃん』


不敵に笑った向は核のロケットを指差すと、ピッと左右に指先を振った。
その動きに連動するように、ロケットは飛びついてくる麗日から、生き物のように動き、俊敏に遠のいていく。


「っうちの超必じゃ、スピード遅くて追いつけない…!」


何度かトライしてみた後、万策尽きた麗日が息を切らせて、通信機に片手を当てた。










ザザッ<デクくん!!>


通信機が受信した麗日のメッセージに、辺りを警戒しながら緑谷が応答する。


「麗日さん!どう!?」
<二人に見つかっちゃった!ごめん!>
「場所は!?」
<5階の真ん中フロア!>


(ほぼ真上だ!!)


「…!」


麗日との会話に、ほんの少し集中を削がれていた。
そのせいで、常に周りを警戒していたはずなのに、すぐ近くまで爆豪が近づいてくるまで、彼の気配に気づけなかった。
急に感じた背後からの殺気。
緑谷が振り向くと、その先には爆豪が立っていた。


(…大丈夫だ…向さんの個性が僕の思ってる通りなら、あのハンデと、相手が麗日さんって状況下で、彼女はほぼ個性を使えないはず…!)


爆豪と緑谷がサシ勝負、残りの二人は麗日が対処する。
戦闘向きの個性ではない麗日に1対2になる不利な状況を任せるという、一見奇妙な布陣を敷いたのは緑谷だ。


(少し強引だけど…これしかない…!)


「もう…君を恐がるもんか!!」


啖呵を切った緑谷に、爆豪は余裕のない本心を無理やり隠し、笑みを浮かべた。




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