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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第62章 悪くない




「学級委員決めた時、おまえ二票だったろ!一票は俺が入れた!そういう事に長けた奴だと思ったからだ!」


轟の言葉を聞いて。
八百万はグッと口を引き締めた後、腰のベルトに挟んでいたマトリョーシカを全て上空に投げた。


「お二人とも、目を閉じて!!」
「んだこれ…」


相澤がマトリョーシカを叩き割ると同時。
眩い光が周囲に広がり、視界を真っ白に染め上げる。


「あります!轟さん!私ありますの!相澤先生に勝利する…とっておきのオペレーションが!」


八百万に引き降ろされ、轟と向が捕縛武器から解放される。
目隠しを外した向は一息ついて、少し興奮気味に同じ言葉を繰り返し続けている八百万を見た。
そして、微かに笑った。




(…焦凍の声は…なんていうか)





いつもは、澄み切った冬の朝のように。
時に、荒っぽい業火を燃え上らせるかのように。
くるくると、彼の放つ温度が変わって。
掴み所がなく、捉えがたい。
彼が言葉で空気を揺らすと。
確かに、彼が本来心の内に秘めている熱が、一瞬で周りにも伝わっていく。







ーーーなりてえもん、ちゃんと見ろ!!






ーーーそういう事に長けた奴だと思ったからだ!!








(…あぁ、なんていうか…)










ーーー深晴、おまえが好きだ














しっかり繋がれたままの、彼の右手。
いつも冷たいはずの彼のその手のひらと。
触れ合った時から熱を持ち始めた自分の手のひらに。
互いの熱が伝わっている。
二人の温度が混ざって。
半分冷たく、半分熱い。











なんていうか







確かに










「深晴、離れんなよ」

















(……手錠も、悪くない)














そんなことを一人考え












指先まで絡めて、しっかりと握られている二人の手を










睨みつけ、表情を曇らせた担任の表情を見て








向は、自嘲気味に笑った









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