第7章 敵の真似ならお手のもの
「おい爆豪くん!状況を教えたまえ、どうなってる!!?」
と問いかけた飯田に返ってきたのは、まるで「爆豪、今日調子どうよ?」とこちらが聞いたかのような何の参考にもならない答えだ。
ザザ…<……黙って守備してろ、ムカツいてんだよ俺ぁ今ぁ…!>ピピッ
「気分聞いてるんじゃない!おい!?…切れた…マジか奴!!」
『マジか奴…』
向は飯田の口ぶりがツボに入ったらしく、バレないようにお腹を抱え、片手で口を押さえて飯田から見えないように、顔をそらした。
ある程度笑い終わった後、向はおもむろに、フロア上に転がるカンや瓦礫を窓から外に落とし始めた。
「なるほど、麗日くん対策だな。名案だ」
これも訓練、やるなら徹底的に行おう!と飯田が窓の下を覗き込みながら賛同する。
向の手から離れたものは地面にぶつかるまで「自然」なスピードで落下した後、コンクリートにぶつかる直前で勢いを失い、急停止、その後残された数センチだけゆっくりと落下し、小さな音を立てて建物外へと移動させられていく。
おそらく向の個性を使用しているのだろうと理解し、「これも頼む」と飯田が重いドラム缶を窓際に寄せると、向はそのドラム缶に手を触れてそれを浮かせた後、窓から出し、また落下させた。
「…君の個性は本当に想像がつきづらいな。あっち向いてホイが強いということは…想像通りにものを動かせる個性ということか?」
『あーどうかな。まぁこの地球上で、引力を受けてないものは存在しないからね』
「引力に関係があるのか?…あっ、まさか重力操作か!!?そんなことができたら、この地球上から任意のものを大気圏まで押し出してしまえるじゃないか!!」
『はは、重力操作だったらそれもできないこともないね』
でも私のとは少し違うなぁ、と向は核のロケットを窓際に寄せ、『窓の方見てるから』と飯田に伝え、窓際に佇む。
てっきり、窓からの侵入は見張っているから任せろ、ということだと考え、「わかった!」と返事をして数分後。
入り口側をじっと見張っていた飯田が、無言のままの向を振り向いてみると、彼女はのんびりと、青い空を眺めていた。
「さては向くん、たそがれているな!?しっかりしたまえ!」