第61章 好きこそものの上手なれ
ワンフォーオールが譲渡できる個性だと気づいた?
その譲渡条件が、DNAを取り込むことだと知って?
いやそもそもなんで僕の個性が欲しいんだ?
なにに、使っ………
「…復讐の為?」
『出久に迫ったの?ううん、ちょっと最近キスしてないからしたいなぁって』
「えっ!!?あっ、さらっと笑顔で誤魔化すのやめて、色々とツッコみたくなっちゃうから…!」
『私に迫られて、個性明け渡してくれるならラッキーだなぁって』
「…そもそも、個性を与えるなんて出来ないから!!そんなお試し感覚で男子高校生からかったらダメだよ、かっちゃんとか絶対ダメだから!!轟くんも危ないからね!?」
『はいはい、明け渡し不可ね。言ってればいいよ、出久もオールマイトもさ。いいじゃん、別に付き合ってる相手いないんだから誰に迫ろうがキスしようが勝手じゃん。寂しいんだよこっちはさぁ、自業自得とは思っていてもさぁ!』
「なんか、本当に自暴自棄だね…?何かあるなら、僕で良ければ聞くよ?」
『良い奴かよ、ファーストキス打算で奪われそうになっといて仏か』
「なななんでファーストキスって決めつけるの!?経験そんなになさそう!!?」
『そりゃ見つめ合うだけであんな顔真っ赤にされれば嗜虐心疼くよね。自暴自棄ついでに、こんな天使にキスされたいとか癒されたいとか思った』
「………っ…」
もちろん、寸止めの予定だったよ、なんて悪びれることなく口にする向。
そんな彼女を見た緑谷は。
彼女の頬に手を置き、ぎゅっと目を瞑って
彼女の片頬にキスをした
『……………えっ』
「……癒された!?」
『……………。』
目を見開いたまま、笑みを消して見つめてくる向に。
緑谷は顔を真っ赤に染めたまま、怒ったような顔を向けてくる。
「僕にキスされたいなんて適当なこと言うから。誤魔化して、しっぺ返し食らったんじゃないの?なら下手に誤魔化すの、やめなよ!」
『…出久』
「君に求められるなら何だってって言ったよね。だからしてあげるよ、キ…キスぐらい」
『……。』
「だから…っ個性はあげられない代わりに。何だってしてあげるし、どんな話だって聞くから…その…!」
僕も、男子だから。
可愛いなんて、言わないでよ。