第59章 梅雨にのぼせる
柄じゃねぇからそれでいい。
色々伝わるように口に出したら、小っ恥ずかしくて死ねる。
だから言わねぇ。
おまえに一目惚れしたこととか。
美味いもん食った時、すげぇ幸せそうに笑う顔がクッソ可愛いと思ってるとか。
気が強ぇとこも好みだとか。
おまえが使う言葉選びが好きだとか。
本当は土日だって会いたいとか。
本当は毎日電話したいとか。
絶対に言わねぇ。
髪を撫でてやったのは俺なのに。
深晴が考えてんのは俺のことじゃねぇと分かって。
ムカつくから、また顔を抱きしめてやった。
そのまま無言で、髪を撫でてやったら。
すすり泣きが聞こえ始めて、胸が詰まった。
声を押し殺す深晴の両腕が、すがりつくように俺の腰に回されて。
俺は、また。
(……クソ……)
また、突き放し難い感覚に囚われて。
イラつきながら。
滑らかな深晴の髪に、何度も何度も触れた。
涙を流す深晴の表情は。
色っぽくて、綺麗だったが。
ははは、なんて乾いた笑みを浮かべていても。
深晴はそっちの方が似合うと思った。
だから。
「…とっととそのブサイクな面、なんとかしろや」
なんて言葉を発した俺に、深晴が突っかかってくることはなく。
ちゃんと意図が伝わったのか、無視しただけなのかはわからねぇが。
伝わっていれば良いと思った。
(…やっぱ)
湿っぽいのは好きじゃない
とっとと、梅雨なんざ
終わっちまえ