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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第59章 梅雨にのぼせる




そしたらまた、泣いてない、なんて深晴が言葉を返すから。


「……………。」


俺はイラっとして。
雑に深晴の頭を掴んで、引き寄せた。


『………!?』
「…………。」


抱きしめたつもりが。
座ってる深晴の座高が足りなくて。
俺は深晴の頭を両腕でみぞおちに抱えて、不機嫌なまま、深晴から視線を逸らした。


『……これどんな体勢?』
「知るか」


黙ってろや。
と命令すると、素直に黙る深晴の様子を伺って。
少しだけ、指先で。
ずっと触ってみたかった深晴の後ろ髪を撫でた。


「………。」


一度。
触れても、深晴は反応を見せず。
二度目には。
指先で髪をとかすように触れた。
三度目。
髪を撫で付けて、頭を撫でた。


どんな顔をしてんのか気になって、一瞬だけ。
深晴を押さえつけるように回した腕を離した。


(………!)


腰をかがめて、俯いた顔を覗き込んで。
深晴がまた、目を潤ませていることを知った。
すぐそこに俺の顔があんのに。
うつむいて、俺と目を合わせようとしない深晴の態度にイラついて。





(………ざけんな)







けど、そんなことより。







(………クソが……)










ムカついて、仕方ねぇ。
どこの誰とも知れねぇ男を。
本気でブッ殺してやりてェと思った。









ーーー私は、何もなくたって大切に思ってる人がいるだけでいい











一緒に遊ばなくても。
干渉されなくても。
触れられなくても。
付き合えなくても。
それでもいいなんてバカげたこと抜かしてたこいつが、バカだっただけのこと。
それだけだ。











それだけ




















それでも


















俺は、思わずにいられなかった。
泣かせてんじゃねぇよ、なんて気色悪いこと。
本気で思った。
けどどいつもこいつも、きっと深晴でさえ。
俺がそんなこと考えたなんて、思いつきすらしねぇだろう。

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