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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第59章 梅雨にのぼせる




「どうもしねぇわ、勝手にやってろ」


ハッ、と鼻で笑ってやると。
メガネはムッと唸り、顔をしかめた。


「向くん、放課後も俺と一緒に勉強しよう。こんな乱暴な教えを受け続ける必要はない」
「あ?ふざけんなブッ殺すぞ」


放課後の勉強会。
深晴がどうしてもなんて騒ぐから、最近は下校時刻まで学校に残ってテスト勉強をしてる。


二人きりなのに邪魔すんな。


そう、言いそうになって踏み留まった。
色々と理由を思い浮かべ、パッと思いついたことを口にする。


「こいつから授業料ふんだくる約束になってんだよ、邪魔すんなや」
『えっ、うそ』
「てめェは黙ってろ」
「悪徳商法に引っかかっていたとは…!向くん、尚更俺と勉強しよう!」
「しつけぇんだよ、てめェも黙れや!」
「断る!君の教え方は見ていられない」


赤点だから頑張っているのに、やる気を削ぐような教え方をしてどうする!
クソメガネはそう言いやがったが、俺からしてみれば。


(赤点のくせにやる気ねぇからイラついてるんだろが…!)


どれだけどつこうが。
どれだけ怒鳴ろうが。
こいつの上の空は変わらねぇ。
教えてくれなんて言うくせに、やる気が見られない。
集中力なんて全く無ぇし。
二度同じことは言わねぇなんて、前置きする意味も甲斐もねぇ。


『大丈夫天哉。私が集中してないからだよ』


見るに見かねて、揉め事の張本人が自白した。
クソメガネをなだめて、誘いを断った後。
深晴は俺の方を向き直り、ため息を吐いた。


『ごめんね、時間ばっかり奪っちゃって』


(…自覚してんなら、初めから頼んでくんなや…イラつくな…!)


こいつが俺の目の前にいると。
勉強がはかどらない。
声をかけられていなくとも。
こいつの手が止まる度。
こいつが身体を動かす度。
集中力が切れて、視線を持っていかれる。
目が合って、我に帰るまで。
ふと気づけば、ずっとこいつを眺め続けている時もある。


『あんなやる気のなさでも、一緒に居てくれて助かってる』






邪魔で仕方ねぇ








邪魔で仕方ねぇのに

















(…クソ…!)
















一緒に、と言われてしまえば
















抗いがたい







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