第57章 学生の本業
「…いや…恥ずくね?冷静に。なんで付き合ってもないのにあんな自信満々にあいつら向のこと誘えんの?」
「イケメンだからじゃね。爆豪も轟も」
「あーそっかー」
遠い目になる切島の肩を、上鳴がポン、と叩く。
その後すぐに電車の扉が開き、「「あ、俺ここだから」」なんて二人が同じ言葉を使った。
「……あれ?切島んちここの近くなん?」
「えっ、おまえも。上鳴いつもバスじゃん!」
「えーマジか!」
角にあるファミレスわかる?
なんて勉強会の開催地を決めながら。
二人で同じ道のりを歩き、「えっ、こっちなん?」「いや、マジか!」なんて言葉を繰り返し。
ようやく、家から数分離れたところにある分かれ道で、違う方向を指差した。
「おぉ、やっとだな」
「ウケるんだけど、ご近所さんじゃん!俺ら交通手段被ってなかったとはいえ、知らないなんてかなりアホだな」
「どこ住んでんのって聞けば良かったな」
「いや、中学被ってなかったしわかんなくね?」
「ちょうど学区の境目だし」
じゃあ、またあとで。
そう言って、上機嫌で跳ねるように歩き出した上鳴を、切島が引き留めた。
「上鳴、話聞いてくれてありがとな!やっぱ一人で考え込むの、性に合わないってわかったわ。爆豪に嫉妬してんのも男らしくねぇと思ったし!」
「ん?いいってそんなの、普通っしょ!」
「おまえに話してみて良かった!」
おまえと友達で良かった。
そんな恥ずかしいセリフを、照れ臭そうに、切島は笑って告げて。
「…おぉ。アホでも、たまには役に立つだろ?」
なぜか少しだけ
上鳴は、声を震わせて答えて。
また切島に背を向けて、歩き始めた。
友人のアドバイスを受けて、じゃあ俺はやっぱり、男らしく彼女をリードできるようになることを目標にしよう、なんて自分らしい向き合い方を見つけた切島が、「あっ」と振り返る。
(もういないか)
まぁでも、またあとで。
勉強に飽きてきたら、彼を誘ってみよう。
どっちかが定期切れたら、交通手段揃えて一緒に学校通わね?
ちょっと気恥ずかしい気もするけど、これもきっと何かの縁だ。
「…っしゃ、とりあえずは中間!!」
出来ることから、始めよう。
そう気を取り直して。
また切島は、歩き始めた。