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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第56章 損する性格




「…そっか」
『うん』
「…それだけ?」
『んー、他にもあるけど。一番はそれかな』
「……そっか」


次第に映画館が暗くなってきて。
映画の前の予告編が、目の前で流れ始めた。
俺はぼんやりとその予告編を眺めて。
座席に深く腰掛けて。







(ーーー……そっかぁ)







光に照らされる彼女の綺麗な横顔を。
俺は一度だけ、盗み見た。























好きな相手のことを知ろうとして。
問いかけ続けることは間違いじゃない。
おまえのことが知りたいって自分の好意を相手に伝えることが、間違ってるなんて思いたくない。








(……何も聞かないのが、正解だったのか)










問いかけないなんて選択肢が。
彼女が側に居続けてくれる、一番の理由になるんだとしたら。
自分が今までしてきたことはなんだったんだろう。
向が好きな食べ物は?
向はいつも何して過ごしてる?
なんだって聞いた。
でも俺、ただ知ったかぶりしてただけだったんだな。
カレー好きじゃないなんて知らなかったし。
完全に恥ずかしいやつじゃん。
おまえのこと、クラスで一番よく知ってると思ってた。
でもきっと、もうおまえのことを一番よく知ってるのは俺じゃない。
なんでおまえに復讐者の映画を見せちゃいけないのか、俺は知らない。
でも、多分緑谷達は知ってるんだろ?
おまえは何も言ってくれないけど。


(………一週間、会わなかっただけなのに)


上鳴に言われて。
向を観察して気づいた。
向の雰囲気が、職業体験前と後じゃ全然違う。
何だか彼女を包む空気が揺らいで見える。
ぼんやり空を見上げていても、一切誰にも隙を見せなかった彼女とは全く違う。


(……聞いても、また教えてくれねぇのかな)


なんだか、ひどく悲しい。
興味を持つのは自分ばっかりで。
彼女は俺と並んで映画を観ても。
いつもと変わらない横顔のままだ。


(…でもさ)





向、悲しくないのかな





何も聞いてくれない爆豪と一緒にいて





それで満足?





本当に、楽しい?





なら俺も、何も聞かない















それでおまえの







一番隣に居られるのなら











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