第6章 似せたんだから当たり前
「君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!」
基礎訓練もなしに?
と疑問を投げかける蛙吹に、オールマイトは「その基礎を知る為の実践さ!」と張りのある声で答えた。
口々に質問や疑問を口にする生徒たちに混ざって、一人。
「このマントヤバくない?」
と全く会話についてくる気がないらしい青山が、隣に立っていた向めがけて質問をぶち込んできた。
ここで話は、冒頭に戻る。
『えっと、優雅?ヤバくないってどういう意味』
「キラメキが止まらなくない?キラメキが止まらなくなくなくなくない僕にピッタリだよね」
『なくなくなくな………え?うざっ』
「ヒドイ!!」
すっかり青山のせいで説明を聞き逃してしまい、とりあえずオールマイトの声にもう一度耳を傾けた。
「よぉし、ではそれぞれくじを引くんだ!」
『えっ、どういう展開』
右隣にいた上鳴に慌てて問いかけると、上鳴はバチィンとウインクを飛ばしてきた後、親指をかっこよく立ててみせた。
「俺もよくわかってねぇから大丈夫!」
『かっこ悪い!ウインクしたわりに引くほどかっこ悪いよ!』
「引くほどって何だよ、引くなよ押してこいよ!」
『梅雨ちゃん!梅雨ちゃん教えて!』
「深晴ちゃん、話聞くの妨害されてたものね。私で良ければかいつまんで教えるわ」
蛙吹の説明を聞く限り、この授業では模擬屋内戦を行うようで、現在はそのペア決めにまで話が及んでいるらしい。
オールマイトに名前を呼ばれ、向は集団から前に進み出た。
(…本物だ)
くじの箱を持つオールマイトを間近でガン見しながら、くじを引くと、そこには走り書きで「当たり!」という文字が書かれていた。
『…当たったっぽいです』
「お!じゃあ向少女は、好きな組に混ざって戦闘訓練に参加できるぞ!」
『好きな組…?』
好きな、と言われても。
まだクラス全員の個性を把握していない向は、困り顔でクラスのメンバーを眺めた。
数秒間考えた後、ふと視界の隅に「HERO」「VILLAIN」と書かれたくじ箱が置いてあることに気づき、決めた。
『…じゃあ…一番初めの組の、敵側がやってみたいです』
この時。
そう答えてしまったことを、向はすぐに後悔することになる。