第7章 敵の真似ならお手のもの
「最初の対戦相手は、こいつらだ!!」
全員がくじを引き終わった後。
オールマイトが「HERO」「VILLAIN」と書かれたくじ箱に片手をそれぞれ突っ込み、わさわさと両腕を動かした後、ボールを1つずつ取り出した。
「Aコンビが「ヒーロー」!Dコンビが「敵」だ!向少女は、Dコンビとのトリオ結成だ!」
すでにペアを作って並んで立っていた爆豪と、飯田が向を振り返る。
その視線を受けて、『ヴィラン?』 と問いかけてくる向に、「不本意だが俺たちのチームがそうみたいだ。よろしく頼む、向くん!」と飯田が返し、やけに周囲の空気をピリつかせ始めた爆豪は、「クソモブ女、俺の足引っ張ったら殺すぞ」と返してきた。
合わなくて良いところで息を合わせて話しかけてくる2人の言葉は向には聞き取れず、結果として「不本意だがクソモブ女のチームみたいだ。俺の足をよろしく殺すぞ向くん!」という脅し文句が頭の中で完成してしまう。
『ヒドイ…』
と顔を両手で覆ってうつむく向に、「どうした!?自分で敵側を申し出たんじゃないか!?」と飯田が手をロボのように縦振りしながら指摘してくる。
「敵チームは先に入ってセッティングを!…と、その前に」
向少女、とオールマイトに肩を叩かれ、涙ぐんでいた向はパァアと顔をほころばせた。
『なっ、なんですか』
(うわぁすごく嬉しそう)
ありありと見てわかる向からの好意。
内心喜びつつ、オールマイトは「ゲフン」と咳払いをした。
「この戦闘訓練は敵側が有利な設定だ!それを考慮し、君たち敵トリオの戦闘力の高さを加味した上で、当たりを引いた向少女にはハンデをつけさせてもらうぞ!」
『…ハンデ?』
それ。
とオールマイトが向の首元のゴーグルを指差す。
「被服控除の書類に目を通させてもらった!座標測定ゴーグルは、今回使用禁止!」
『えっ』
「そして、向少女の個性使用は「手が直接触れたもの」「自分自身の身体に作用するベクトルのみ」に限定する!」
現時点で自分が出来る最大限を引き出せ!
とオールマイトは激励し、敵トリオを演習地へと送り出した。