第55章 友達リクエスト
幼馴染と一緒に過ごさなくなってから。
いつも、いつも探してた。
どっかに、俺みたいなアホいないかなって。
思ってること顔に出やすくて。
言って良いことと悪いことすら区別がつかなくて。
隠し事しても、罪悪感でバラしちゃうような。
でも隠し事には、ちゃんと理由があって。
どんな時でもはははって笑ってて。
おまえ良い奴だからって、俺が引くようなことしても友達でいてくれて。
「なんでもない」なんて言っておきながら、察しろなんて望まないような。
(…そりゃ、そんな俺の願望詰め込んだような奴いるわけねぇわ)
リクエストが多すぎる。
そんなぴったりハマる奴なんて見つかるわけない。
「…なー、今度の土曜もんじゃいかね?」
「土曜は映画だ、日曜にしようぜ!」
『日曜アリ。勝己もアリだそうです』
「ざけんな、お好み焼きにしろ」
「おっ、乗ってくんの珍しいじゃん」
「上鳴は?日曜」
「…おー、日曜あり!」
「「『じゃあ、日曜で!』」」
ぴったりハマる唯一の友達は見つからなかったけど
その代わり
「…俺、雄英きて本当良かったわ」
「あはは、なんだよしみじみと」
ぴったりハマる友達が、三人できた。
「とっとと帰りのHR始めるぞ」
「じゃああとで俺、トークルーム作っとくから!」
「おぉ、頼んだ!」
教室に入ってきた担任の姿を見て、それぞれが教壇に向き直る。
あぁ、なんだもう放課後か。
そう思って、また少し寂しさが湧き上がってきた。
こんな気持ちになるのはいつぶりだろう。
トークルーム、いちいち作らずに、四人のチャットグループ作っちゃおうかな。
(……グループ名なんにすっかな……)
帰り道。
スマホ片手に、足りない頭を巡らせて。
おぉ、やっぱこれっきゃないじゃん、なんて呟いて。
俺は友達欄から3人の名前を探し、チャットグループを久しぶりに作った。
「いつメン」なんて、懐かしいチャットグループと同じ名前をつけて。
少し涙が出てきた理由にすら、気づかないバカなフリをして。
(…早く明日になんねぇかな)
また、明日。
そう言った友人達の顔を思い浮かべて。
バスに乗って、1人で揺られる帰り道は、やっぱり少し寂しくて。
けれど、少しも。
悲しくはなかった。