第55章 友達リクエスト
『電気こそ、今日なんか変じゃない?何かあった?』
「……え?いや俺は別に」
『別に?』
「なんでも……」
そう言ってしまいそうになってから。
「…なんでも、な…くないわ」
無理やり訂正した。
『うん、どうしたの?』
「……いや、なんかちょっと寂しくて」
『えぇっ一大事じゃん、電気が死んじゃう!』
「いや俺いつからウサギポジ?」
『どうしよう鋭児郎、電気が寂しくて死んじゃうって』
「えっ嘘!?」
「いやどう考えても嘘だろ、本気にすんな切島!」
俺のツッコミも虚しく、何故だか急に焦り始めた切島は、机に頭をぶつけるほど俺に頭を下げてきた。
「ごめん上鳴!実は、俺と緑谷と向で今度、映画行く!隠したりして本当ごめん!」
「……は?」
「別におまえがいると嫌とかそんなんじゃなくってさ、むしろおまえいると楽しいけど、ただ映画だけは見たくない!余韻ぶち壊されそうだし、おまえ映画見た後「マジ感動、マジやばくね?」しか言わなさそうだし、難しい映画だと、わかんなくなってきたら途中で「ウェイ?こいつ悪いやつ?…あー、こいつ良いやつ?」とか隣の奴に聞いてきそうだから誘えなかったマジごめん!!」
「いろいろツッコミが追いつかねぇ!!でも俺確かにどんな映画見ても「マジ最高、マジやばくね?」しか言えねえし、難しい映画だとわかんなくなってきたら「ウェイ?こいつさっきやられたやつ?なんで生き返ったん?」とか隣の奴に聞いたりするからあながち間違ってない、むしろ大正解、それは俺誘わなくて正解だわ!!!」
「なんでもない」なんて言って誤魔化していた切島は。
俺が寂しがっている、なんてどうでもいいことを聞いただけで、勝手に大暴露大会を始めてしまった。
「でも、なんだ、それしか思いつかねえ。あと他になんかあったか?」
『んー。勝己は?』
「あ?」
『電気が寂しいんだって』
「知るかアホが、勝手に寂死んでろ」
『「「寂死ぬ!?」」』
爆豪の語彙力に、ブハッと三人で噴き出して、笑い転げているうち。
なんだかもう、俺はアホすぎて、何を寂しがっていたんだかわからなくなってしまった。
『言ってくれればいいのに』
「あっはっは…え?」
言いたいことあるなら、と。
深晴は柔らかく笑って、また帰る準備を始めてしまう。