第55章 友達リクエスト
羽毛レベルでふわふわ生きてる俺でさえ、その出来事は結構トラウマレベル。
男はみんな誰だって、友情なんかより彼女を選ぶもんっしょ!なんて雑に楽観的に考えて、ようやくそのトラウマに落とし所を見つけて。
友情より彼女優先でウェイウェイ生きてきて、何人かの女の子と付き合って、学んだ。
女子の「なんでもない」は、なんでもなくない。
女子の「察して」は、男には察せない。
男子にもそういうやついるだろって言われるかもしれないけど、割合として女子の方が圧倒的にそういうヤツ多い。
女子は恋愛対象にはなるけど、友達はムリ。
だって何考えてんのかわかんないし、めんどくさい。
何より、幼馴染の嫌な印象が拭えない。
実は、遊ぶ男友達も、バカながらによくよく選んでる。
切島は裏表なさそうだから一緒に。
爆豪は感情筒抜けで分かりやすいから一緒に。
深晴は、彼女になってほしいから一緒にいる。
友達は友達だけど、ちょっと違う。
「なぁ深晴!今日なんか変じゃね?どしたん?」
帰りのHRが始まる前。
深晴に聞いてみた。
また、女子の「なんでもなぁい」が返ってくるかと思いきや、深晴はペラっと心情を答えてくれた。
『ちょっと電気に引いてる』
「えっ、嘘。俺なにした?」
『ヒーロー殺しがカッコいいと思うのはどんな感受性なのかと思って』
ヒーロー殺し。
今朝の話題。
深晴が真顔で見つめてきていたことを思い出し、ハッとした。
(…そうだ、言ってたじゃん『なんでもない』って…やっぱなんでもなくなかった)
「おぉ…わり、でもすぐ謝ったじゃん!」
『…?うん、だから』
「…ん?だから?」
『だからなんでもないって言った。別にもう謝ってたから、言うことなくない?私がちょっと引いたままなだけで』
してほしいことがあれば言うよ、と深晴は真顔のままに鞄へ教科書をしまい始める。
「…お、おぉ…えっ、謝っても引いたままなの?」
『うん、引いてる。クソを下水で煮込んだようなキミの感受性に』
「おいやめろそんな可愛い顔してクソなんて言わないで!!」
『ははは、褒めても引いたままだぞ』
「引くなよ、ちょっとだけだって!ちょっとだけかっこいいって思っちゃった思春期の俺がいただけじゃん!!」