第55章 友達リクエスト
「ハッ、だからテメェらはモブだっつーんだよ…パンダだってトラと大差ねぇ猛獣なんだぜ」
「いや、なんだぜって言われてもおまえはパンダとは似ても似つかない危険人物なんだぜ!!?」
「あァ!?」
「もーほら、色気がない!おまえらと話しててもなーーんもときめかない…!見てほら、あの女子たちの華やかさ!見習って!まるで花畑!」
「まるでテメェの脳内だな」
「はいまたそういうこと言う、見てみほら深晴のあの穏やかな顔!!俺らと話してる時とはぜんっぜん、もうぜんっぜん違いますわぁ…幸せそ〜楽しそう〜爆豪がもうちょっと静かにしてりゃ、おまえに連れ回されてるあいつの周りにも女子が集まってきてくれるのに」
お母さんもうあの子が心配よぉ、なんて完全に設定を「家庭」に決めたらしい上鳴が、片手を口元に持ってきた後、もう片方の手でその肘を持ち、くねくねとし始めた。
「あっ、切島くんちょっといいかな?」
「おぉ、緑谷!どした?」
「映画の話なんだけど」
「うぉぉ、待て緑谷!」
切島がガタッと席を立ち、緑谷と連れ立って教室の後方へと移動した。
「麗日さん今月お財布事情が厳しいみたいで…また別の機会にって言われちゃったんだ」
「あーそっか、じゃあどうすっかな…他に女子で、映画好きそうな…」
「あのさ、切島くんもしかして、向さんと二人で行きたいんじゃない?」
「えっ!!!い、いやまさかそんな」
図星を直球で言い当てられ、切島が顔を赤くして、ブンブンと手を振り回す。
「あっ、やっぱりそうなんだ。全然気にしなくて大丈夫だよ!かっちゃんと上鳴くんは…その、えっと…映画っていうより、ボウリングとかカラオケとか盛り上がる場所に誘った方が喜びそうだもんね!」
「おぉ、ナイスフォロー緑谷。俺かんっぜんにあいつらと映画とか行きたくねえと思ってたけど、そういう言い方すれば良いんだな!」
「素直!!結局言っちゃうんだね、フォローの意味が……えぇっと、そしたらさ。こういうのはどうかな?他に誰かを誘うことはせずに…」
「なになに?」
ヒソヒソと、自席の後ろで行われている秘密会議に、轟がじっと耳を澄ます。
名案だ緑谷!なんてハイタッチを求めている切島を見て、爆豪が舌打ちをした。