第55章 友達リクエスト
「で?」
一時間目と二時間目の間。
上鳴は真顔で、隣の席に座る向に話しかけた。
『……で?とは?』
「日曜、どうだったんだよ」
『…ん?なんか焦凍から聞いたの?』
「遊びに行ったん?轟んち」
『あぁ、うん』
「…………」
『………?』
「……で?」
『……え?』
一向に感想を述べてこない向に上鳴が「んぉおお」と声を漏らし、身を乗り出して向に問いかける。
「どうだったって!何かなかったか?変なことされたり、したり!」
『何か……?ケーキがあった』
「デア、イズを聞いてんじゃねぇんだよ!ホワッツハップン!!何が起こったって聞いてんの!!」
『何も。Nothing』
「おおふ、やけに発音いいな…何もないわけあるか!!健全な男女高校生、甘酸っぱい青春!男子高校生は狼!おまえはよくそんな死地に赴こうと思ったな!?さては…内緒で付き合ってんだろ!!」
『ははは、まさか』
向は席を立ち、集まっていた蛙吹と耳郎の方へと向かっていってしまう。
何やらイヤホンの選び方を耳郎に聞きに行ったらしい向の背を上鳴がムッと睨みつけ、その不満げな顔を見て、切島が背後の席から声をかけた。
「何イラついてんの?」
「いや、イラついてねーけど。切島、おまえ何書いてんの?」
「さっきの授業の復習。なぁ、英語の中間の範囲どこまでだと思う?」
「それどころじゃねぇよ…!」
「は?だって中間はもうすぐ」
「中間の範囲なんてどうだっていい!!どうすんだよ切島!!紅一点がもし俺らのグループから抜けたら、俺らはリア充グループから転じて、ただの猛獣の飼育係に成り果てんだぞ!?わかってんのか!!」
「猛獣って誰のことだおいコラ…1秒たりともてめぇらに飼育された覚えはねぇぞ!」
「うるっせニトロ取り扱い注意につき放牧してやってるんですぅ!!放任主義の家庭なんですうちは!!」
「飼育してんのか放任してんのかどっちなんだ…つーか、動物園か家庭かどっち?」
あぁあ、とこの世の終わりを予言したかのような真っ青な顔で、上鳴が頭を抱え、後ろの切島の座席へと突っ伏した。
作業を邪魔されても「おい上鳴邪魔すんなよー」なんて穏やかだった切島が、「誰がパンダだ」とツッコんだ爆豪に「いや勘違いすんなパンダ様に謝れェ!!!」と珍しくブチ切れた。