第53章 そうじゃない関係
「で、本題だぜ向」
マイクが騒音を発した場所から少し移動して、人がごった返していた駅の屋外へと出た。
手近なベンチに腰掛けたところで、マイクは口元だけ笑いながら、色のついたグラサンの向こうからじっと鋭い視線を向けてきた。
「おまえサン、なんかあるよな?」
『……!』
「あいつはそれでいいって言うんだけどよぉ、このままじゃいけねぇと思わねぇか?なぁ?今年に入ってからおかしなことばっか起きてる。オールマイトのせいだけじゃねぇんじゃねぇかと俺は思ってるわけだ」
で、なんか言っときてぇことはないか?
と問いかけてくるマイクの顔を見て、 向はストローから口を離した。
『……今年から、ヴィランが活性化し始めたのが私のせいじゃないかと?』
「そうとまでは言ってねぇよ。でもなんか知ってんじゃねぇのかってな。洗いざらい話すっつっといて、おまえの大家さんは何も話さねぇし!怪しい芽は摘んでおきたいだろォ!同期の一番近くにそれがありゃ、尚更よォ」
『………。』
向は、雫が滴り始めた飲み物のカップをじっと見つめて、また話し始める。
『…何を話しましょうか?』
「なんで雄英に来た?なんであいつのところにいる?当たり障りない答えは無しな!好きな男のダチに、そんなしょっぺぇ答え返すなよ!!」
『…なんで雄英に。私は資格と力が欲しくて。自分の個性を、使うことが許されていない状態が落ち着かないし、強くなりたい。なんで消太にぃのところにいるのかって事に関しては、母親が私を親族に預けて蒸発した後、引き取ってもらったからです』
「なんで資格がなきゃ落ち着かねえ?正当防衛に関してなら、個性の使用は誰にだって許されてる。資格が必要って事は、それで危害を加えたい相手がいるってこったろ。強くなりたいってことに関しても一緒だ。……で、母親に関しては……まぁ、その……なんで」
『なんで?』
「なんで、いなくなったか知らねえの?」
『さぁ…たぶん私が許せなかったんでしょうね』
「許されねぇようなことしたのか」
『そうですねぇ…そりゃもう』
「………。」
話したくない、という彼女の雰囲気に、マイクが眉間にしわを寄せる。
自分だって生徒のプライベートな部分を踏み荒らしたくはない。
けれど彼女はUSJ、保須に居合わせ、駅から突き落とされた本人でもある。