第53章 そうじゃない関係
「えーっ深晴一緒に帰んないの?」
「用事って買い物?なぁなぁ、それ俺居てもいいヤツ?深晴一人で買い物したい派?」
「…待つ」
早く家族に会いたいらしい芦戸は、残念がりながらも帰路へ。
駅で用事が、と言い出した向に乗っかった上鳴と、願望ダダ漏れの発言を繰り返す轟がパーティに加わりたがっている。
(…たぶん、消太にぃは焦凍から引き離したいんだろうなぁ……なんと断ればいいのやら)
『…えっと……あ。下着を見たいからちょっと』
「……お、おぉ……それはあれだな、俺ら邪魔なヤツか」
『うん、ごめん』
「………。」
「別におまえがよければ俺は構わねぇ」なんて押し通せるわけもないセリフを吐く轟に、上鳴が「口の利き方には気をつけろ!!!」と怒鳴りながら轟の口を両手で押さえた。
「おまえなんだ、保須で深晴と何あった!?吐け轟テメェー!!!」
『何もないから、ただ残念なイケメンに進化しただけだよ』
「そりゃ進化じゃなくて退化だろ!!!」
「…深晴」
『また日曜にね』
「ニチヨッ!!?何それ何曜日!?まさかデート!!俺とだってまだ行ってくれたことないのに!!」
「日曜は日曜日だろ」
ははは、と懐かしい喧騒に楽しげな笑みを浮かべる向をじっと見て、轟は浅く息を吐いた。
「じゃあ、また連絡する」
『うん、怪我お大事にね』
連絡ってなに、なんなの!?と騒ぐ上鳴と一緒に立ち去って行きながら、連絡は連絡だろ、と真面目に返答を返す轟の声が遠のいていく。
『…!』
轟が肩越しに向へと手を振って、一瞬だけ振り返った。
JRの中で見た、寂しげな笑みを浮かべたまま。