第6章 似せたんだから当たり前
「おいこらクソモブ女」
向は、自身の出席番号が書かれた戦闘服ケースを壁から降ろす途中、とっくに更衣室へ向かったと思っていた爆豪に話しかけられた。
『……なに、日本語力レベル4野郎』
「誰がレベル4だ!!」
『レベル1はクソ、レベル2はクソカス、レベル3はクソカス死ね』
レベル4はクソカス死ねコラ、ね。
と『ね』の部分でにこやかに笑いかけてくる向に、もっと語彙力あるわ!!とブチ切れながら、爆豪は歩き始めた。
歩きながらで済む要件なのかと察し、向は戦闘服ケースを両手で抱え、爆豪の隣に並んで教室から出ていく。
「あーほら、取られちゃった」
後方の扉から出ていくその二人をオールマイトが前方の扉付近で見送り、緑谷の肩をポン、と叩いた。
「えっなに、なにがですかオールマイト!?」
「向だろ」
意図がわからず聞き返す緑谷の横を、轟が眠そうに通り過ぎて行きながら、答えを教えてくれた。
(……取られる……?向さん……?かっちゃんと逢坂さん……あっ)
思い至った緑谷が訂正する前に、オールマイトは教室にまだ残っていた生徒たちを「Hey Hey!」と追い出しに側から離れて行ってしまった。
(…そんな風に見えるのかな?いや、でも向さんは誰とでも仲良いって感じだし、あ、そっか僕がどっちかっていうと女子と話せそうにないタイプなのに話してるのを見てオールマイトはそう思ったってことなのか)
ブツブツと呟きながら更衣室に駆け足で向かい、何人かの生徒たちの集団に追いついた。
まとまっているようで全く個別に話して歩いているらしいその集団の中に、爆豪と向の姿を見つけた。
『勝己、どんなユニフォーム?』
「…見りゃわかんだろ」
『それもそうだね』
「てめぇはどうせ残念な個性に似合いの残念なユニフォームだろうけどな」
『いや、ユニフォームは自信あるよ』
「……あ?」
お楽しみに、と深く語らない彼女に、爆豪は好奇心が湧いたのか「うるせぇもったいぶらずに教えろや」と聞いてしまい、『見りゃわかんだろ』と向にあしらわれた。
もはや戦闘を開始しそうな二人を周りの生徒が引き離し、「なんで一緒に歩いてんの!?」と当然の疑問を誰かが口にした。