第6章 似せたんだから当たり前
午後の授業開始のチャイムが鳴り終わる数秒前。
「わーたーしーがー!!」
というたくましい声がどこからともなく聞こえて来た後、「来た!!」と口走る1-Aの生徒たち。
彼らの予想を裏切る形で「普通にドアから来た!!」という名乗りを上げて、銀時代のコスチュームに身を包んだオールマイトが教室に現れた。
「HAHAHAHA!ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!」
早速だが今日はコレ!!
と、わざわざ作って来たのか、「BATTLE」と書かれた掌サイズのパネルを持って掲げて見せながら、オールマイトは声高らかに宣言した。
「戦闘訓練!!!!」
「「戦闘……訓練……!?」」
聞きなれない用語を口で繰り返し、それぞれ思い思いの表情を浮かべる生徒たち。
カッという笑みを向けながら、オールマイトはリモコンを操作して、教室の壁に収納され、ナンバリングされたユニフォームのケースを提示した。
「戦闘服!!」
「おおお!!」
「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」
オールマイトの号令を聞いて、我先にと生徒たちがユニフォームの並んだ壁に集まっていく。
そんな中、鞄から大きめの袋を取り出した緑谷に視線を向けていた向は、壁際でもみくちゃになっている集団から距離を取るように緑谷の席に近づいてきた。
『出久、それなぁに』
「これ、僕のユニフォームなんだ」
『…被服控除出さなかったの?』
「うん、お母さんが作ってくれたから」
ちょっと、恥ずかしいからみんなには内緒ね。
そう言って照れ臭そうに笑う緑谷を見て、向はじっとその袋を眺めた後、いつも通り、にこりと笑った。
『内緒ね。了解』
ほぼ大多数が届いたユニフォームに夢中になっている中、話し込んでいるように見える緑谷と向。
なんだか照れながら女子生徒と会話をする緑谷を見て、オールマイトは両手をグッと胸元で握りしめた。
(グッドラック、緑谷少年!)
そんな勘違いをされていることに気づくことなく、緑谷は向を戦闘服回収へと向かわせ、自身は更衣室へと向かおうと動き始めた。
「いや、更衣室隣なんだから一緒に行こって言えばいいじゃないか!」
「えっ!?」
突如ツッコミをいれてきたオールマイトに、緑谷が驚いて声をあげる。