第51章 君にお世話を焼かれたい
翌日。
保須警察署署長、面構と、緑谷の監督責任者グラントリノ、飯田の監督責任者プロヒーローマニュアルを交えて。
ヒーロー殺しの出現現場に居合わせた雄英生四人は恩赦を受けるにあたっての心構えと、今後の行動についての忠告を説かれた。
資格未取得者が、保護管理者の指示なく個性で危害を加えたこと。
たとえ相手がヒーロー殺しであろうとも、それは立派な規則違反。
捕まえるため、ステインに火傷と重傷を負わせるに至った三人と、轟を守るため一度だけ個性による蹴りをステインの顔面に放った向の行動は似ているようで大きく違う、と面構は「ヒーローの卵」達に苦言を呈した。
((一番吹っ飛んでたし、殺ってやろうと思ってたけどな……))
大型犬に説教されているのか大人に説教されているのかあやふやな状況が終わりを迎えたところで、そんなことを考えた轟と向が目を見合わせた。
「大人のズルで君たちが受けていたであろう称賛の声はなくなってしまうが…せめて、共に平和を守る人間として…ありがとう!」
思わぬ形で始まった路地裏の戦い。
四人の英断と功績は世間に知られることはなく、終わりを迎えた。
そして、午前10時頃。
三人の病室には、二人の面会者が訪れた。
「出ぃズゥクゥ〜〜!!!」
「お、お母さん病院では静かに…!」
「天哉、お医者さんなんだって!?」
「…いや、診察はこれからなんだ」
(……似てる……)
泣き虫な出久にそっくりな、緑谷母。
眼鏡をかけた目元がそっくりな、飯田母。
少し面白い気持ちで2組の親子をぼんやり眺めていただけだったのだが、その轟の視線に気づき、緑谷がハッとした。
「お、お母さん本当!大丈夫だから!パート先休んできてくれたんでしょう!?でも本当、先に帰ってて大丈夫!!」
「もう今日一日お休みもらっちゃったわよ!どうしてこう、行事があるたび怪我ばっかりしてくるの!」
「……すいません、あの。体育祭ん時は本当に、緑谷に悪いことを……」
「轟くんが謝ることじゃないよ、大丈夫!僕が勝手に怪我しただけなんだから!!」
「あっ、お友達二人とも怪我は!?あらあらお母様でしたか、すみません挨拶もなく!」
「あぁ、いえいつも天哉がお世話になっております!」
「いえいえこちらこそ!」