第50章 警察のお世話にはなりたくない
高速移動した飯田が、轟に向かっていたステインの刀を蹴り折った。
追撃を食らわせ、ステインを轟と向の目の前から退ける。
「轟くんも、緑谷くんも関係ない事で…申し訳ない」
「っまたそんな事を…!」
「向くん、返事はノーだ」
『……!』
飯田は向を振り返って、ひどく悲しそうに、言葉を繋げた。
「…口先ばかりの、男ですまない」
けれど、と。
彼は言葉を振り絞り、また前を向き直る。
「もう這いつくばっているわけにはいかない。…俺のせいで、二人にこれ以上血を流させるわけにはいかない。それに…向くん!!!」
迫力がある声に、ビリビリとした気迫を受けて。
向が目を丸くした。
「君の帰りを待つ人は必ずいる!!君の帰る家はある!!君はとても素晴らしい女性だ、もしヒーローになるつもりがないんだとしても、君はなんにだってなれる!!」
「帰る家が無かったとしても…僕は君と一緒に、帰りたい…!!また学校で挨拶を交わして、君ともっと、語り合いたい!」
『…天哉』
立ち上がってきた飯田と、庇うように彼の背後に隠された向を睨みつけ、ステインは舌打ちをしながら、苦々しげに言葉を吐く。
「とりつくろおうとも無駄だ」
おまえらは私欲を優先させる贋物にしかならない!
そう言い切るステインを、轟が睨みつける。
「時代錯誤の原理主義だ。飯田、人殺しの理屈に耳貸すな」
「いや、言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格など…ない。それでも、折れるわけにはいかない」
そして、飯田は取り繕うことも隠すこともせず。
本心を口にした。
「俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう…!」
「……論外……!」
飛び出すステインに、轟が炎熱の個性で瞬時に壁を作る。
宙に舞い上がったステインを見上げ、飯田が轟に指示を出す。
「俺の脚を凍らせてくれ!排気筒は塞がずにな!」
「邪魔だ!」
投げナイフを投げてきたステインの攻撃から、飯田が轟を庇い、プロヒーローに投げられた刀を、向が飛び込んで反射した。
彼女が飯田の元から離れるのを予測したのか、ステインは飯田の右腕にもう一本刀を投げつけ、地面に彼を打ち付ける。
「飯っ…!」
「いいから早く!」