第50章 警察のお世話にはなりたくない
手伝おうか。
その時も彼女はそう言った。
君の言葉は聞こえているから、大丈夫。
そんなことを言っておきながら、僕はハッとして言葉を返した。
「……何をだ?すまない、さっきは何の話をしていた?ド忘れしてしまった。本当にすまない!」
『……忘れてるわけじゃないよ、聞こえてないんだよ』
「いや、そんなことはない。きちんと君の声は届いているぞ!」
『……届いてない。けど、今の言葉は届いたんだね』
なんでだかわかる?
とまた意味深なことを問いかけてくる彼女の表情が、なんだかとても所在なさげで。
僕は一向に答えが浮かばない自分の頭の足りなさを責めた。
「すまない、なぜだ?」
『そんなに謝らなくていいよ』
あぁ、そうだ。
あの日は、金曜日。
「すまない、兄の病院へ行かなくては!また明日、逢坂くん!」
『…うん』
また明日、なんて僕の上の空の返事を聞いて。
君は悲しげに笑って、返事を返した。
また明日、と同じ言葉を。
会えるはずもないのに、そう言って。
彼女から逃げ出した僕を見送って。
君は言ったな。
自分の復讐は後回しにすると。
だからようやくわかった。
復讐から僕を遠ざけようとする君の言葉が、なぜ今の今まで僕の心に届かなかったのか。
君自身、復讐に身をやつしていたからこそ、僕へはどんな言葉も届かなかったんだろう。
復讐者が復讐者を止めるだなんて、そんなふざけた話はないだろう。
僕が「また明日」と言ったあの時。
君が悲しげに笑ったのは、僕を案じる君の言葉が、君の復讐への執着故に、僕へ届かないことを悟ったからだろう。
「……っ僕を引き止められないなら、君が代わりに請け負うとでも言うのか」
そこまでして、友人の身を案じる君の強さが、僕は妬ましくて、大嫌いで、仕方なかった。
「…ふざけるな…!」
君が羨ましくて、仕方がなくて。
大嫌いなのと同じくらい、視線を独占したくなるほどに、そんな君に恋い焦がれた。
ーーーなりてえもん、ちゃんと見ろ!!!
あぁ、そうだ。
僕は友人に誓った。
世間が放っておかないヒーローになる。
自分自身に誓った。
君の視線を独占して離さない。
そんな
兄のような、カッコいいヒーローに