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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第50章 警察のお世話にはなりたくない




『手伝おうか』


頭上から降ってきた声に、轟とステインがハッと顔を上げた。
次の瞬間には、斬りつけようと背後まで振りかぶっていたステインの刀の切っ先に向が舞い降りて、重力を感じさせない身のこなしで距離を詰め、長い足を横に振り切った。
何十キロものハンマーで殴られたような衝撃がステインの顔面に走る。
顔面につま先を引っ掛けるように蹴りを入れられたステインは、突き当たりのビルまで吹き飛ばされた。
轟から飛び退いたヴィランから視線を晒すことなく、向が轟の隣へと着地する。


「向さん!?」
『やぁ出久。残念ながらまだ私一人なんだよね、何もさせてもらえないからこっち来ちゃった』
「あのクソ親父、まだ片付けてねぇのか」
『まぁまぁそう言わず』


やぁ、天哉。
まるで、学校で顔を合わせたかのような挨拶をしてくる向に、飯田が言葉を失った。


『それで、返事は?』


轟と緑谷が体勢を立て直したステインにまた向き直ったと同時、向がくるりと踵を返して飯田の元へと近寄ってきた。


「……返事?」
『うん。復讐するんでしょ?その様子じゃもう立てないみたいだし、私が代わりに請け負おうか』
「………何を、笑って…」
『何で?』


彼女は笑顔を消して、首を傾げる。
その軽い口調と、彼女のものとは思えない口ぶりに、顔面蒼白になった緑谷が振り返った。


『仇討ちが出来るのに、天哉はどうして笑わないの?私からしたらキミの方がよくわからない、殺す気満々で来たのに全然楽しくなさそうだね』
「…向さん?何、言ってるの?ヒー、ローの仕事は…相手をボコ殴りにする仕事じゃない、出来る限り怪我なく、相手を制圧して警察に渡すことだよ…!」
『焦凍と出久はヒーローを目指してる以上、無意識にブレーキがかかるよね。殺さないように。でもさ、私は天哉の復讐の手伝いがしたいんだよね。なぜってそれは、私は天哉の気持ちが理解できるし、死んだ方が社会の為になる人間はごまんといると思ってるからなんだけど…まぁ何より、天哉のヒーローの道が閉ざされるくらいなら、私が代わりにこの男を殺そうかな』
「…向さんもでしょ?君も、ヒーローを目指してるからヒーロー科にいるんだろ?意味、わかんないよ…!」

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