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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第50章 警察のお世話にはなりたくない




「次から次へと…今日はよく邪魔が入る…」
「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ」


遅くなっちまっただろ。
クールな表情を崩すことなくそう言って、左手に炎、右手に冷気を纏った轟は、倒れている飯田とヒーロー、四つん這いになっている緑谷を見た。


「轟くんまで…」
「何で君が…!?それに…左…!!」
「何でって…こっちの台詞だ」


一括送信でクラスメート達に送られた緑谷の位置情報。
その意図を推理し、現場に駆けつけた轟は氷結でステインを退かせ、さらに炎で追い討ちをかける。


「あっち!」
「うぉっ」


遠くにいた緑谷、ヒーローを、角度をつけた氷壁で絡め取る。
炎でステインを攻撃がてら氷を溶かし、滑り台のようにして二人を回収。
雑すぎる救出の代償に、緑谷とヒーローはゴロゴロと汚い路地裏の地面を転がり、ヒーローに至ってはゴッとアスファルトに盛大なキスをした。


「こいつらは殺させねえぞ、ヒーロー殺し」


(顔面からぶつけた…)
(今プロヒーロー、すごく痛そうな音して落ちてきたよな…)


容姿も台詞も個性も声も何もかもがカッコいい轟の背後、カッコ悪い体勢で転がったままのプロヒーローに、緑谷と飯田の視線が一瞬だけ集まった。


「…何見てんだよ…」
「轟くん、そいつに血ィ見せちゃだめだ!」
「無視かひよっこ!!」
「それで刃物か、俺なら距離保ったまま…」


両手をステインに向けようとした轟の顔面めがけて、小型ナイフが飛来する。
寸前で躱し、視線が逸れた一瞬でステインが轟との距離を詰めた。
一つ一つの動きが二択三択を迫ってくる攻防戦。
戦い続ける轟に、飯田が震える声を発した。


「…二人とも…何故だ…やめてくれよ…兄さんの名を継いだんだ…僕がやらなきゃ、そいつは僕が…!」
「継いだのか、おかしいな…俺が見たことあるインゲニウムは、そんな顔じゃなかったけどな」


おまえん家も裏じゃ色々あるんだな。
生死を分かつ戦いの最中、冷気をその身におびながら、冷や汗を頬に伝わせて。
轟がまるで世間話のような言葉をかけてきた。
徐々に轟が劣勢になり始めた時。
緑谷の身体の拘束が解け、ステインと飯田達の前に立ち塞がる。


「僕が奴の気を引きつけるから後方支援を!」
「相当危ねえ橋だが…そだな」


二人で、守るぞ。
その同級生の姿と声に。
飯田は目を見開いた。

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