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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第5章 先生としてどうなんですかそれは





定時で帰れる。
そう思った日に限って、仕事が次々と流れてきて追加されていくのはなぜなのか。
急いで仕事から帰ると、彼女は待ち疲れたのか、リビングで横になって眠ってしまっていた。


「……。」


ダイニングテーブルに、どこかの病院の領収書と、相澤が渡した茶封筒、その中身の残りが丁寧に並べてある。
好きなものを買ってこいと伝えて、彼女が何を買ってきたのか興味が湧いた。
近くのスーパーで買い物をしたらしいレシートも2枚、釣り銭と一緒にテーブルに置いてある。
起こさないように静かに移動し、それを手にとって、確認する。


「……。」


買った品物は、冷蔵庫の在庫が尽きかけていたゼリー飲料が4つと、いつも買ってくる2Lの飲料水が半ダース。
もう1枚置いてあったレシートは食料品店のものではなく、クリーニング店の預かり伝票だ。
急ぎで頼んだということは、ジャージを出してきたんだろう。
彼女の性格から、おそらく自分のものはそこまで丁重に扱わないだろうと考え、飯田のか、と納得した。
他に何かを買ってきた様子はない。
だからこそ、せめて早めに帰ってやろうと思ったのだが、その思惑は今日に限って完全に潰えてしまった。


シャワーを浴びて、部屋着に着替え、グラスに水を注いで。
二人がけソファに小さく丸まって眠ったままの彼女の枕元に、ゆっくりと腰掛けた。


(…よく寝てるな)


リカバリーガールの治療の副作用と、入学初日で気を張っていたせいもあってなのか、彼女は相澤の帰宅に気づくことなくコンコンと眠り続けている。
その寝顔を眺めて、彼女の前髪が顔にかかっているのを見て、くすぐったそうだと思い、額に触れた。
一度。
髪を寄せたが、さらさらとした彼女の髪はまた、横を向いて眠る彼女の目元にかかってしまう。
二度。
前髪に触れて、また髪が顔に落ちた。
三度。
指先で彼女の耳に髪をかけて、ようやく。


「………。」


もう、触れる必要はないはずなのに、相澤は彼女の後ろ髪に指を通す。
その滑らかな指通りが心地よく。
手を離すことが出来ずに、何度も。
彼女の髪を撫でていると、ふと、手の影から見上げてきていた彼女と目が合った。





「…ただいま」






と声をかけると






おかえり











向は、嬉しそうに笑って言葉を返した




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