第48章 いつもお世話になっております
怒鳴るなと、もっと誠実に向き合えと言う割に
おまえは、ケーキの一つでも一緒に
食べてやってはいないじゃないか
せっかく、どうにかうまくやれないものかと
家族らしく、在れはしないかと
ほんの気まぐれに
嫌いな臭いが立ち込めるケーキ屋なんかで
30分も時間をかけて、ケーキを選んで
それでも
歩み寄るのを許してもらえず
自分が全てを投げ打ってまで手に入れようとした目標すら
いつからか諦めてしまった
「……深晴」
自室に戻ろうと廊下を歩いていた彼女を引き止めた。
幼いながらに、自分よりも焦凍のことをよく理解しているであろう彼女なら。
自分が望む答えを、返してくれるだろうという不思議な確信があった。
「…俺がNo.1になる男だという事を、焦凍に宣言してやりたい。そのままの言葉ではウザがられる、俺の意図を伝えられるような別の言葉があるか」
その彼の様子を見て、向は少しだけ考えた後、問いかけた。
『…No.1になることは、焦凍に背負わせたんじゃないんですか?』
「……そういうわけにはいかなくなった、俺はオールマイトを越えてNo.1に上り詰める!!!」
No.1になって、見返してやる。
そう決意の炎を燃やし、その気持ちを伝える言葉はないのかと問いかけてくるエンデヴァーに、向は眼を見張った。
『No.1になったその先は?』
「授業参観に行く!!!」
『……は?』
「授業参観に行って、どの父親よりも自慢できる男がおまえの父親なんだと焦凍に分からせる!!認めさせてやる、俺がNo.1になったら!!!俺の凄さを!!!」
『………。』
もう、どうしようもない。
失ったものに気づいたところで、No.1への執着が捨てられるわけでもない。
なら、何が何でもなるしかない。
俺は間違っていなかったと、実感する為に。
No.1に上り詰めた俺を見て。
家族らしいことなんて何一つして来なかった俺を使って、周りに自慢して、ほんの少しでも。
俺が父親で良かったと
思ってもらいたいと願うのは、身の程知らずだろうか