第48章 いつもお世話になっております

「…少女、さっきの4という数字は？」
『…え？あぁ、焦凍くんと話してた内容ですか？ここ、バイキングじゃないですか。でも焦凍くん、迷った末に蕎麦しか食べてなかったので。提案しました』
「何を」
『せっかく何日か同じ場所に滞在するんだから、選ばなくても良いよって。選ぼうとせず、片っ端から食べていこうって。さっき聞いてたのは、あと残りの品数いくつ？ってことで…』
「何でそんなことをする必要がある。バイキングは好きなものを選んで食べるものだろうが」
『選ぶのに時間がかかるんですよ。私たち』
「そんなつまらんことしてないで、バッと決めてさっさと食え！！せっかく俺を間近で見れる場所にいるんだ、時間がもったいない！！！」
『……エンデヴァーさん、甘いもの嫌いって本当ですか？』
「ム？…大嫌いだが？それがどうした！！」
『では他の食べ物にも好き嫌いが？』
「ある！！それがどうした…！！だからバイキングなんだろう、説教するつもりか！？」


向はクスクスと笑って、プンスカと要領の得ない会話をする向にも怒っているらしいエンデヴァーを横目で見た。


『あなたがどういう意図でその言葉を使うのか、それを考えることすら相手を急かしてしまったら、相手は息苦しさを覚えるばかりです』
「………何？」
『…さっきの』


ーーーそんなつまらんことしてないで、バッと決めてさっさと食え！！せっかく俺を間近で見れる場所にいるんだ、時間がもったいない！！！


『あんな言葉を焦凍くんにかけたら、きっとまたウザがられるだけで終わってしまいますよ』
「ウザッ……！！？」
『けど、本人としてはもっと別のことを伝えてるつもりなんですよね。例えば……「バイキングは、好きなものを取って食べられるから、嫌いなものは食べなくても良い。醍醐味を台無しにするような食べ方するくらいなら、好きなものだけ選んで食べろ。嫌いなものに割く時間がもったいない。そんなことをするくらいだったら、プロヒーローたちがせっかく近くにいるんだから、話を聞いたり見たりすることに時間を割いたら良いと思う」』


だいぶ、かなり、ポジティブに解釈してますが。
向は楽しげに笑って、エンデヴァーを見た。
エンデヴァーは彼女を見てフンッ！と鼻を鳴らしたあと、肘をついて、冷静になって話し始めた。