第48章 いつもお世話になっております
保須市中の見回りを終えると、ほぼ貸切状態となっているビジネスホテルへと帰る。
ホテルで待機していた別のチームが夜のパトロールへと出向き、向と轟が加入させてもらっている本部隊は朝まで休息を兼ねた待機時間に入る。
『焦凍、また端で食べるの?』
職業体験2日目。
バイキング形式の夕食時。
食堂へ向かうと、轟は打ち解けていないわけではないプロヒーロー達から離れ、遠い席にいつも腰掛けている。
プロヒーロー達の元へは必ずエンデヴァーが現れるからだと理由は聞いていたのだが、日中の2人の様子を見ていると、少しなら歩み寄れそうな感触もあったため、向は彼に問いかけた。
「あぁ。俺に合わせなくていいぞ」
迷った素ぶりもなく、轟がそう答える。
『…家でもご飯一緒に食べないの?』
「当たり前だろ」
『…当たり前じゃない場合もあるよ?』
「…説教しにきたのか?」
『しないよ、そんなめんどくさいこと』
キミとご飯を食べに来たんだよ、と笑って、向はルームキーを轟のテーブルに置いた。
『ねぇ、あと何品?』
「4だな」
『早』
会話を切り上げてバイキングテーブルに向かおうとした時。
向はすぐ背後に立っていたエンデヴァーとぶつかり、『うわ、すみません』と謝った。
「あっちで、固まって食べろ」
見下ろしながらそう命令してくるエンデヴァーに、轟が食事の手を止めて、視線だけ動かして問いかけた。
「理由は?ミーティングでもすんのか」
「しない。相棒達と友好関係を築くのも一つの仕事だ」
「…友好関係だと?おまえ、自分で言ってて恥ずかしくねぇのか」
偉そうに指図すんな。
そう言って荒々しく席を立ち、轟が夕食の乗ったトレーを持ち上げた。
そのままプロヒーローたちの方へ向かうのかと思えば、彼は返却台に食器を下げて、食堂から立ち去ってしまった。
「なんだあの態度は!!」
テーブルを荒々しく叩きながら、エンデヴァーが不満げに轟の座っていた座席にどっかりと腰を下ろした。
座った、ということは自分が立ち去るわけにはいかないのでは、と考えた向も、エンデヴァーの向かいの席に腰掛ける。