第48章 いつもお世話になっております
目的地に着くまでは、とても気分が良かったのに。
「来たか、焦凍!少女も一緒だな、懸命な判断だ!」
目的地に着いてからは、ひどく心が荒んだ。
「…名前ぐらい覚えろよ、テメェで呼んでおいて…」
開口一番、轟がイライラとしながら実父から向へ発せられた挨拶の内容を諌める。
向は『あぁ大丈夫、大丈夫』と軽く間を取り持ちながら、深々と頭を下げた。
『一週間、よろしくお願いします。息子さんにはいつもお世話になっております』
「少女!君には将来、焦凍の相棒となる自覚を持ってこの職業体験に臨んでもらう。焦凍!おまえも実の息子だからといって甘やかされると思うな!」
「…相棒?おい、なんの話だ」
「体育祭で彼女の実力、容姿と個性を見て将来性があると踏んだ。暫定だが、おまえの相棒にはこの少女が相応しい!」
その勝手な口ぶりに轟が眉間にしわを寄せ、冷え切った目でエンデヴァーを睨みつける。
「勝手に決めてんじゃねぇ。人様の家の子どもの将来まで、口出してんじゃねぇよ…!」
「フン、放っておけば埋もれるかもしれない子どもの将来までバックアップしてやると言っているんだ、何を怒ることがある?」
『あの、一旦落ち着きましょうか。私がここに来たことと、焦凍の相棒の話はまた別物なので』
コスチュームに着替えてきますか?
とさりげなく轟とエンデヴァーの距離を一旦引き離そうとする向の発言に、エンデヴァーが鼻息を荒く吐きながら答えた。
「あぁ、着替えたらすぐ出発だ!」
『えっ…どこへ?』
「保須だ!」
エンデヴァーは、対峙する親子を周囲でハラハラとしながら見守っていた他のプロヒーロー達に、腕をバッと横振りしながら指示を出した。
「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する!!市に連絡しろぉ!!」
「「「了解!!!」」」
バタバタと慌ただしく動き始めるプロヒーロー達に、向が目を丸くする。
その号令に対し、異論も反論もなく迅速な行動を取るエンデヴァーの「相棒」達に、轟が無言で視線を向けた。
((……これが…))
全国でトップレベルの、プロヒーロー事務所