第47章 寝ても覚めても
「………で、なんだって?」
『もう忘れたわ!!!』
「そりゃ残念だ、話の途中だったのに」
『白々しい……!』
「ともかく。この先もおまえが隠したいことがあるなら隠せばいい。けど、それは承諾ってことじゃない。許容だ。俺がまた待てなくて行動に移す前になんとかしろ」
『なんとかってなに』
「具体的には妥協しろ。何追っかけてんのか知らんが、人参ぶら下げた馬じゃあるまいし、もっと視野を広く持て。俺じゃなくたって周りに大人はたくさんいる。カケラでも話せそうな人間がいれば話してみろ」
『………。』
「わかったら返事は」
『………わからない』
「おい」
『話したいけど、方法がわからない』
「………」
もし、話す方法が見つかったら、聞いてくれる?
そう問いかけてくる彼女に、相澤は深くため息をついた。
「…話す方法なんてもんが必要かは判断しかねるが…いいよ。おまえが望めば、その方法も一緒に考えてやる」
だから、安心して眠れ。
そう言う相澤の腕に巻き取られ、向は少しホッとして、目を閉じた。
「………愛してる」
そう聞こえてきた彼の言葉に、また眠りに落ちていくのを妨げられながら。
『……私も』
大好きだよ、とまでは言えず。
高鳴って落ち着かない鼓動を必死に抑え込みながら、向は、相澤の腕の中で眠りに落ちた。