第47章 寝ても覚めても
『どうだってよくはないよ。大切な話だよ』
「何か一つでいい、求めてくれたら応える。俺を試して、それで俺がおまえの理想にかなったら…」
『……かなったら?』
「……かなったとしても……それでも、おまえは離れていくのか」
長い前髪で相澤の顔が隠れて、表情が読み取れない。
向はその前髪に触れて、ゆっくりとかき分け、彼の耳にかけた。
相澤が向の唇を奪おうと身体を寄せ、向が『まって』と制止した。
『そんな生活、息が詰まるよ。離れていかなくとも消太にぃが自分で離れていきたくなる』
「…おまえ、遠縁の親戚から似ているようで似ていない関係になるって許可しただろ」
『…そうだね。でもキスは恋人同士がすることじゃないかな』
「俺たちは違うって?」
『…違うでしょう?』
「想い合ってるだけじゃ足りねえってのか」
『……足りるんだろうけど。でも』
彼女の言葉を妨げて、相澤が自身の口で、彼女の口を塞いだ。
二人の吐息が、口を離した一瞬お互いの唇にかかる。
『……っ…』
「…暗くてよく見えない。今どんな顔してる」
『急に、まだ話して』
聞きたくない、と相澤がまた口を塞ぎ、彼女の頬に手を添えた。
繰り返されるキスに、彼女が呼吸しづらそうに吐息を漏らす。
何度か優しい口付けを繰り返した後。
相澤はようやく彼女から身体を引き離し、頬に触れていた手を、彼女の頭に乗せた。