第47章 寝ても覚めても
教えてやろうか。
そう囁くと、彼女は楽しくなってきてしまったのか、クスクスと笑い始めた。
『知らないわけじゃありません、まだ距離を測りかねているんです』
「…測らなくていい」
『良くないの。どっちが歳下なんだか』
「……。」
穏やかに、微かに笑う彼女の頭に触れた。
心地よい髪の指通りに彼女の存在を感じて。
少しだけ、彼女の方へ身体を寄せた。
空いている右手で彼女の腰に手を回して、ゆっくりと互いの身体を引き寄せる。
緊張故か、なんだか身体を硬直させている彼女に顔を近づけ、コツ、と額を合わせた。
「…もっと、早くに出会っていたかった」
口をついて、出てしまいそうになるのは。
彼女が離れていきそうで怖い、誰かに奪われてしまいそうで嫌だ、本当に俺なんかが好きなのか、どうして俺を好きになった、と。
膨れ上がった猜疑心と、自尊心の無さから来る無駄な問いかけ。
どれだけ言葉を尽くしても、彼女の心は数値化されず可視化出来ない。
彼女の心音、火照った頬、潤んだ瞳、そのしぐさを見逃さずにいるしか彼女の想いを推し量るすべはない。
「……なぁ、おまえを責めてるわけじゃないから、悪いように取らないでくれ。こんな風に感じる俺が悪い。けど、確証が欲しい」
『……確証?』
「深晴、おまえに…良く想われてるって根拠が欲しい。…指先だけじゃ足りない」
触れたい、と言葉に出して。
ようやく、「彼女」がどうしてあれほどまでに愛してくれと叫んでいたのか理解できた。
自分と深晴は愛し合っている。
一緒に暮らして、食事を囲んで。
けれど確かに、自分に自信を失った今となっては、夜が訪れる度不安になる。
(…あぁ、そうかあいつ)
自分に自信が無かったのか
『ーーー今、誰のこと考えてる?』