第46章 公私混同etc
おまえら、付き合ってるんだろなんて。
周りの言葉に図に乗った。
相澤への好意以外に彼女がそこに立っている理由が思いつくほど、その頃はまだ大人じゃなくて。
(…一緒に、帰ろうと言ってみようか)
勝手に勘違いをして、彼女の隣に並ぶたび、そんなことを考えるようになった時。
「じゃあ、また明日」
そう言って彼女がいなくなる直前。
決まって一人の教師が、校舎から出て行くことに気づいた。
そして、ようやく理解した。
彼女は相澤と一緒に居るために、窓の外を眺めていたんじゃない。
彼女は相澤と帰りたくて、隣に居続けたんじゃない。
学校から帰って行く一人の教師を待つ暇な時間、ただそこに居ただけの相澤と一緒に、時間を潰していただけだった。
「あんな大人のなにがいいんだ?」
そう問いかけると、彼女は顔を真っ青にして、それまで一緒に穏やかな時間を過ごしていた2人とは思えないような反応を返した。
「あんたより強いし、見た目もかっこいい」
「んなこと聞いてない」
「聞いたでしょ?なんであんたじゃないのかって」
「……。」
「強いしかっこいいから。それだけ」
「…へぇ。付き合ってるのか」
「だったら何?」
「もしそうじゃないなら、俺と付き合ってほしい」
「…は?聞いてた?先生の方があんたより強くてかっこいいの、だから好きなの。だからあんたは好きじゃないの」
「なら、強くなるよ」
「…かっこよさは?その髪ダサすぎ」
「それなりに気を回す」
だから、俺と付き合ってほしい。
そう言った相澤に、彼女は驚いた顔をして。
暇つぶしになるならいいよ、なんて最低な返事を返してきたのに、相澤はその返事が聞けただけで、もう十分満足だった。
まるでいつも、何をしていても、彼女に試され続けるような日々を過ごして。
それでも、そんな付き合いも世の中には多く存在しているだろうと納得して、うまく付き合っていたつもりだった。
けれどいつも心のどこかで、漠然とした不安に蝕まれていた。
自分が気に入られる努力をやめてしまったら。
いつ、彼女と一緒に居られなくなるのかわからない。
強く、かっこよく。
望まれる姿であり続けようとして、彼女と暮らし始めて、やたら昼夜忙しなく鳴り続ける彼女の携帯電話に出て知った。
彼女は相澤の他にも、「暇つぶし」の相手と関係を持っていた。