第46章 公私混同etc
ーーーそれが生徒に対する態度ですか
無言で調査票を眺める相澤を、マイクが横から肘で小突いてきた。
「なぁに熱くなってんだ、子ども相手に」
「……違えよ」
「熱くなってたろ?」
「そうじゃない」
「……。」
深くため息をついて、座席から立った相澤を追いかけ、マイクが背を叩く。
「シャキッとしろシャキッと!!」
「…十分してるだろ」
「背筋伸ばして、髪も切る!!髭も剃る!!ほらそれでもうパーフェクッ!!」
「なにがだ」
慣れない励ましの言葉をかけてくる同期に、「いいんだよこのままで」と言葉をかけ、相澤が顔の横で手をひらひらと振った。
次の授業があるクラスへと向かいながら、ぼんやりと考え込む。
ーーーそんなものはありません
ーーー私の役に立てばいい
(……俺もか?)
ただ、役に立つ大人だから、側にいる。
そんな考えが頭に浮かび、歩みを止めた。
(……そんなわけねえだろ)
自分で否定して、また歩き出した時。
ふと廊下の窓に反射する自分の姿を目に映した。
ボサボサの長髪に、疲れ切った目元。
無精髭に、凝り固まったせいで若干前のめりになっている両肩。
(………。)
言い様のない、脱力感。
窓に触れた一瞬。
自分がまだこの校舎で学生だった頃の姿が目に映った。
(……あぁ、そうか)
思い出した。
(…そうだ、そうだよ)
この窓から、自分はあの頃も一人、外を眺めていた。