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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第46章 公私混同etc




『あ、あの…机に置いておいてもいいですか?』


背を向けたまま、返事を返さない相澤。
向はだんだんと不安になって、給湯スペースに立ったままの相澤を追いかけ、隣に並んだ。


『あのっ』


コーヒーの入ったマグカップを持って自分のデスクに戻り、腰掛けた相澤を見て、向が途方にくれた。


『…あの、無視しないでください』
「無視してない」
『じゃあこっち見てください』
「………。」


こっちを見て。
と次第に彼女の声が消え入り始めたのを背中で感じて。
相澤は深くため息をつき、振り返った。


「…おまえは遅刻してきたから聞いてなかったな。1年次の指名は、本格的なドラフト指名とは違う。だから今年指名をもらっていようが、卒業前に興味が削がれれば一方的にキャンセルなんてことはよくある。インターンにもつながる大切な場面だ。体育祭で何をエンデヴァーに言われたかは知らないが、そんな口約束まともに相手にするな」
『口約束を信じてるわけじゃありません。けど、もらった指名リストの中から選ぶなら、この事務所が一番私の目的に合ってます』
「事件解決といっても色んなヒーローがいる。おまえの将来のヒーロー像はエンデヴァーか?」
『そんなものはありません』


ただ、私の役に立てばいい。
そう言った向の言葉を聞き、オールマイトがじっと彼女に視線を向けた。


「そんなもの?雄英でヒーローを目指す以上、将来のビジョンは不可欠だ」
『探している最中です』
「…おまえ、本当屁理屈が得意だな」
『そうでしょうか?屁理屈が得意なのは先生では?』
「………。」
『アドバイスありがとうございます。でも他に私を引き止めたい理由がないのであれば、受け取ってください』
「それが教師に対する態度か」
『それが生徒に対する態度ですか?』


次第に教師たちの視線を集め始めた二人を見るに見かねて、隣の座席に座って聞こえないふりをしていたマイクが声をあげた。


「オーケイ向!!!昼休み終わっちまうから早く戻んな!!」


ピッと調査票を向の手から受け取って、マイクが「ヨーホー!」と海賊のような掛け声で向の背を押しやる。
職員室から出て行く彼女の背を眺めながら、相澤はマイクから、彼女の調査票を受け取った。

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