第45章 らしい名前をつけましょう
ミッドナイトの監修のもと、15分のシンキングタイムを終え、生徒たちが次々と自分の考案したヒーロー名を発表していく。
「この名に恥じぬ行いを」
万物ヒーロー、クリエティ!
と、八百万が教壇で発表を終えた時、教室後方の扉が開いた。
『おはよーです、遅くなりました』
「向!!どうだった!?怪我!?」
大きな声で向を呼ぶ切島の声を聞き、寝袋に納まって眠っていた相澤が目を開いた。
『問題ないです……クリエティ?』
「今授業で、ヒーロー名の考案やってんだ!!考えたら発表すんの!!」
『へー』
向はふと、轟の白紙のフリップに目を止めた。
『…。』
そしてマーカーを勝手に持つと、キュキュ、と轟のフリップに「ケーキヒーロー、ショート」と書き込んだ。
「おい」
『かわいい』
「消せねえだろ」
『いいじゃんショートで』
「…。」
ーーー焦凍はショートだから、ショートケーキね!
そう言った姉の言葉を思い出し、轟が眉間にしわを寄せる。
嫌な思い出。
嫌だったはずの、記憶。
彼女の言葉からその出来事を思い出し、轟がムッとして言葉を返す。
「…そのままだろ」
『だって名は体を表すって言うし。他に白と赤半分ずつ混ざってるものってある?』
向は轟の左を指差し、『イチゴと』右を指差して『生クリーム』と名前の由来を説明した。
彼女の言動を理解し、ハッとした轟が問いかけた。
「……名前は?」
『名前?……あー、ショートケーキのショートと、名前の焦凍?おぉ、それは私の理由よりも文系っぽくて知的な感じ』
良いじゃん、焦凍らしい。
向はいつものように、はははと笑う。
(…ダジャレのどこが文系で知的なんだ)
轟がそう言おうとした時、向の背後に立つ相澤の眼力がものすごいことになっているのに気づいた。
向は目を見張った轟の表情で大体察したらしく、一気に顔を青ざめさせ、振り返りながら謝罪するというターン土下座をクラスメートに披露した。
「…向、遅刻したらまずその授業の教師に報告、その後担任に連絡、そしたらようやく授業参加だ、同級生と私語を交えて相談するのはもっと後でいい」
『常識のカケラもねえ教え子ですみませんホウレンソウ大好きです私』