第42章 、おまえが好きだ
『……!』
向は、じっと轟の骨ばった手を眺め、ゆっくりと自分の重心を轟から遠ざけた。
「向、おまえにまだちゃんと言ってない」
『…言わなくていいよ、応えられないから』
「なら相澤先生には言ってもらったのか?おまえが好きだって」
『……ねぇ、なんで相澤先生が出てくるの?』
「聞かなくたってわかる、俺はおまえをずっと見てたから」
『見てたって……ほんのひと月』
「時間なんて関係ない」
『関係あるよ』
「なら大きすぎる歳の差も関係あるだろ」
『……。』
真っ直ぐに、熱を帯びた瞳で向を見つめてくる轟に、向は言葉を失った。
手を引き寄せ、抱きしめられそうになったところで向が掴まれている方の腕を振り払った。
『ごめん、応えられない』
「…どうして?」
『………。』
「…向。そこまで想ってるのに、どうして相澤先生にはおまえのこと話さない?」
『…理解して欲しいと思わない』
「そんな子どもじみた復讐の気持ちなんて、大人には理解されないと思ってるからだろ」
俺は、わかる。
轟は向から視線をそらすことなく、告げた。
「おまえの復讐してやりてぇって気持ちを、絶対に否定したりしない。けど復讐に執着した人間が、どれほど視野が狭まるものなのかも知ってる。だから…俺はおまえの側で、見届けたい。何をしようとしてるのか知って、何を選択するのが一番向にとって良い選択なのか…未来を選択しなきゃいけねぇ時に、意見を求めてもらえるような…身近な存在になりたい」
饒舌な彼の言葉に、向はじっと耳を傾けて。
小さな声で、問いかけた。
『…なんで、そこまで』