• テキストサイズ

風向きが変わったら【ヒロアカ】

第42章  、おまえが好きだ




『焦凍の言う通り、私は普段個性を半分しか使ってない。もう一つ個性があるわけじゃなくて、50%しか使ってないってことね』





仲直り、しよっか。






いつも通りの笑みを浮かべて、向はおしるこを飲みながら、歩き始めた。
轟もお茶を開封し、口をつけて、通りがかった公園を無言で指差した。
向はその意図を汲んで、公園内に設置されたベンチへと腰掛けた。
ブランコや、ジャングルジム、トンネル状になった遊具に幼い子どもたちの姿はない。
携帯の画面で時間を確認すると、現時刻は17時30分を回っていた。


「…使いたくねぇからか」
『まぁ、そんなところだよ。使ってもいいけど、見られたくない。仲間内だろうと誰だろうと関係なしに』
「何でだ」
『このご時世、誰が敵か味方かなんてわからないよね?』


切り札は誰にも見せないから切り札なのさ!
と向はクスクスと笑いながら、またおしるこに口をつけた。


「…そんな防犯上の理由で全力を出さねぇなんてことあるのか?…でも、それぞれの事情だよな。理解はできたけど、納得はできねぇ」
『否定されないだけで充分だよ。別に周りを信用してないとかそういうことじゃない。けど盲信するのと、信頼しながらも身を守るのは別だと思ってる』
「……向」


おまえ、誰に復讐する気でいるんだ?
轟は問いかけて、彼女をじっと見つめた。


『そこはまだ話したくないなぁ。いつか話せたら話すよ』
「…復讐するってことに関しては否定しねぇな」
『しないね。復讐するからね』
「おまえ、ヒーローにはなりたいんだろ?」
『んー、どうかなぁ』


ははは、と笑って受け流す向に、轟が視線を向け、ガーゼの貼られた彼女の額に手を伸ばした。


「病院、深夜でもやってるとこなら今日中に検査受けられるぞ」
『大丈夫だよ、明日遅刻していく』
「…結果分かったら、連絡欲しい」
『焦凍は怪我、擦り傷だけ?』
「あぁ」


ホームに飛び降りた時、砂利にぶつけた彼の手のひらを向が眺めた。
轟は自分の手を覗き込む向の頭を反対側の手で撫でて、心配ない、と呟いた。

/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp