第40章 世間は狭い
轟は震えながら、向を抱きしめ続ける。
向はその言葉を聞いて、問いかけた。
『……だから、飛び出したの?』
「…あぁ」
『…死ぬかもしれなかったのに』
「…そういやその時は、考えてなかった。今になって自分がどれだけ命知らずか、実感してる」
『えっ』
「考える前に飛び出してた」
「おまえを助けられるなら、俺はどうなったって良かった」
はっきりと告げられた轟の情。
彼女は目を丸くして。
「おまえを助けたい」と言っていた轟の気持ちを、浅く推し量っていたことに気づいた。
『……ごめん』
耳に押し当てられた彼の胸から伝わってくる心音の速さは、死に直面した故のことなのか。
彼女を深く愛するが故の鼓動なのかは、わからない。
『……………焦凍』
理由のわからない彼の鼓動の高鳴りに、知らないふりをして。
向はただ、彼の名前を呼び。
ごめん、と
謝ることしかできなかった