第41章 ただの茶番さ
駅員と共に、ホームの防犯カメラの映像を確認した。
けれど結局、彼女を突き落としたはずの誰かの存在は人混みに紛れ、わからないままだった。
「君、雄英だよね?USJの件もあるし、一応何かあると大変だから、学校と保護者の方にも伝えておかないと」
駅員に呼ばれ、事情聴取をしに来た男性警察が向と轟に話しかけた。
『あ、保護者は…ちょっと今海外にいるので、連絡不要です。学校にだけ伝えてもらえれば』
「不要って、海外にいるならなおさら伝えないと」
『あー。すいません、嘘です。親いないので、学校だけ連絡していただければ』
「………?」
訝しむ顔をした警察が、隣に立つ轟を見つめた。
「…プロヒーローの身近にいると、怨恨ってことも考えられるからね?ヒーロー目指すなら、きちんと身を守らないと」
『…はい』
「それと、意味のない嘘をつくのも心配だ。君の名前は?」
『……向深晴です』
「僕は、塚内といいます。この辺りを管轄してる。また同じようなことがないように、我々大人も危機意識を高めるよ。連絡先を渡しておくから、何か思い出したことや分かったことがあれば、連絡してね」
『…はい』
「最後に。本当に怖い思いをしたね。早く帰って、明日からに備えて休もう。轟くん、君は将来優秀なヒーローになるよ」
パトカーで送ろうか?と提案してくる塚内に、向は首を横に振った。
お世話になりました、と淡白に挨拶を終え、轟と向が駅員事務所から退室した。
「………送ってく」
『大丈夫』
「……」
彼にしては珍しい、ムッとした顔を向けられ、向は申し訳なさそうに視線を逸らした。
「……送る」
途中まで、と付け足された確固たる意志に、向はしばらく考えながら歩いた後、コクリと頷いた。
「突き落とされたって、ヴィランか?」
『わからないけど…たしかに突き落とされる前に』
ハッとした向を見て、轟が「犯人の顔思い出したか?」と問いかけてくる。
彼女は首を横に振り、『気のせいだった』と何かを口にするのをやめてしまった。