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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第40章 世間は狭い




「…うぜぇ、出るぞ」


いらだたしげに座席を立つ爆豪に、拳藤がすかさず「私は青春ごっこもたまにはいいと思う、あんたたちお似合いだし、応援するよ」なんてフォローを入れた。
この子出来る子だな、と切島と上鳴が感心している間に、彼女に対して一瞥もくれなかった爆豪がトレーの片付けを始めた。
塩崎を発見し口説き始めた上鳴と、鉄哲からトレーニングの予定を聞かれ始めた切島を置いて、向と爆豪は一旦店の外に出た。


「あっ、一位の爆豪!」
「あの二人ほんとに付き合ってるんだー!」


周囲の言葉を聞き流しながら、爆豪が向を見下ろした。
向は周りからの視線と呼び声に特に反応することなく、爆豪と視線を合わせた。


「……おまえ、よく凝りもせず隣に立つな」


その嘲りとも呆れとも取れる発言に、向は視線を逸らして言葉を返した。


『彼女扱いは嬉しくないけど、サイドキック扱いは正直、悪い気はしない』
「さらっと振ってんじゃねぇ殺すぞ!!」
『私は急にキレる人彼氏にしたくないから』


理性的で包容力のある穏やかな大人な男性がいい、と趣味を余すところなく発表する向に、爆豪がわなわなと震える。


「あ、待たせてごめん!じゃあカラオケ行こうぜ!」


店内から出てきた切島と上鳴の発言を聞き、向はピッと片手を軽くあげた。


『ごめん、私全然曲聞かないから聞くだけでもいい?』
「マジ?そりゃ暇でしゃーないっしょ、じゃあCMソングは?俺最後まで歌えるの結構あるし、深晴1番歌って俺にバトンタッチしな!」
『あらやだイケメン、チャラいだけあるわ』
「チャラいは余計だって」
「あ、でも俺カラオケの会員カード持ってない」
『私も』
「……持つわけねぇだろ、んな邪魔なもん」
「持ってまーす!3店舗ほど!どのカラオケ店がいい!?」


上鳴は財布から数枚、違うチェーン店のカラオケの会員カードを取り出した。
褒めて褒めて!という願望が書いてある彼の顔を見て、他の三人は顔を見合わせ、口を揃えた。


『「「チャラっ」」』
「いやそこは褒めて!?」


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