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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第40章 世間は狭い




「あっ!!俺のナゲット!!」
「もう俺のもんです」
「欲しいならそう言えよ、黙って食うなよなー」
『正論』


真っ当な切島の主張など聞こえないフリの爆豪が、向のポテトに埋もれたナゲットを掘り起こし、さも当然のごとく「ソース寄越せ」と命令してきた。


『嫌です』
「うっせぇ黙れ」
『あっ。唯我独尊ってやつだ』
「覚えたての言葉使いたい症候群か」
『なぜわかった…!?』
「古文2点女がほざいてんじゃねぇ」
『……………』


向がスッとソースを爆豪から遠ざけ、冷めた目を彼に向けた。
爆豪はそんな彼女の手元を眺め、ジッと目を合わせた後、声を張った。


「あー、足が痛ぇな、どこぞのバカなクソ女が隠蔽の為に足を踏みやがっ『あれれどうしたのかな勝己くん、ソース取って欲しいなら言ってよーもーやだなーしょうがないなぁもー』……」


荒々しくナゲットを掴んだ向が、爆豪の口にそれを押し当てた。
彼女の指すら噛みかねない勢いで爆豪がナゲットに噛みつき、それを賄賂として認めたのか、押し黙る。


「隠蔽ってアレっすか?昨日の手繋いだ写真?えっ、深晴から繋いだの!?」
「うええ上鳴、結構深いとこ追求すんな…!?修羅場になるからやめとけよ!!どうせ爆豪が勝手に繋いだに決まってんだから」
「どうせってなんだ黙れやクソが!!」
「じゃあマジなとこどうなん?」
「……………」
『……あぁ、アレは私がちょっと目眩してて、人気のないとこまで引っ張ってもらってたんだよ。抱えられるより目立たないかと思ったけど案外目立っちゃってたね』
「嘘だァ、怪しい!!」
「いや、うそだった方が地雷だろ…!」


審議に入る切島と上鳴。
つらっとした顔で嘘を吐いた向を、肘をついたまま飲み物のカップを片手に持っていた爆豪が見つめた。
二人の視線が交差してから、数秒後。


「俺のもんに何しようが勝手だろうが」


不機嫌そうな爆豪の発言を聞き、向は目を丸くして、上鳴と切島の表情が絶望に染まった。


『いや、誤解を招く言い方するな』
「「俺のもん!!?俺のもんとは!!?」」
「何も間違っちゃいねぇよ」
『間違ってるから!』


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