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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第39章 応答




錯覚、という言葉に、向は引っ掛かりを覚えて、相澤の瞳を不満げに見つめた。
相澤はすぐ近くにある彼女の顔をじっと眺めて、「なんだよその顔は」と頬を軽くつねった。


『…錯覚じゃないよ』
「…今にわかる」
『わかってるくせに』
「………何を?」
『私が本当に…そう、思ってるから、邪魔にならないように、近づかないでいようとしてること』
「…「そう」ってなんだ」
『………った、大切に思ってるって』
「俺だってそうだよ。わざわざお互い、お互いを選ぶ必要なんかない。爆豪でも、轟でも、おまえを気に入ってる奴はたくさんいる。子ども同士、お似合いだよ」
『っ子どもじゃない』
「ムキになるな、だから子どもだって言ってるんだ」


相澤は向の顎を持ち上げ、じっと見下ろしながら、彼女の瞳を覗き込んだ。


「このままがいいんじゃなかったか?なんでおまえが俺を口説いてる?」
『……あ…』
「…俺は今、おまえに「錯覚じゃない」って言わせたくて、おまえを乗せたんだよ。大人だからな、子どものおまえを乗せようと思えば、ある程度は好きにできる」
『っ……!』
「…「今までの関係」を望んでるおまえと、もっと近づきたいと思う俺には必ず差が生じる。その時、俺はおまえの意志に反したことをするかもしれない。肉体的、精神的。どちらをとっても力関係は俺の方が上だ。一歩間違えば、おまえが望む居場所を俺が壊しかねない。だから、おまえが俺と近づかないことを望むなら、その頭で計算しろ。俺を全て拒絶するのか、どこまで許すのか。悪いが俺も、もう冷静じゃない。だからこれは、不甲斐ない俺からおまえへの頼みだ」











俺がおまえに嫌なことをしようとしたら、必ず拒絶してほしい











相澤は、向を真っ直ぐに見つめたまま。
言葉を付け足した。


「俺はおまえに触れたい。同居人としてじゃなく、一人の男として。おまえの俺への気持ちが「錯覚」ならそれでも結構。この先数ヶ月か、数年。おまえが錯覚に陥ってる間に、節度を守ったまま、後戻りできないようにしてやろうとさえ考えてる」
『錯覚なら錯覚で利用すると…?さすが抜け目無い…』
「真剣な話だ。だから、おまえも本気で拒めよ」


俺に、好きにされたくなかったら。
相澤は至極真面目に言葉を紡ぎ、最後に軽く咳払いした。

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