第39章 応答
執拗に食えと迫る相澤から逃げるように、情けない愚痴を零しながら、マイクは荷物を抱え込み始めた。
「あっ!奥さん俺ゴミ出しときますんで!!じゃあ、ゴミ回収車が来る前にお暇します!!」
『あらあら本当?助かっちゃうわぁ』
「そのままおまえも回収してもらえ」
「あんな臭い場所に収納されたらマジで俺の口からぶっ放しちゃう」
じゃあな!!とかっこよく、去り際の挨拶だけキメながら、マイクが玄関から出て行った。
それを見送った二人に、一瞬の沈黙が流れる。
『…消太にぃも、早く出かける準備しないと』
「………」
じっと向のワンピースを見ていた相澤は、無言で向の頭を撫でてきた。
『えっ、なに』
「……似合ってる」
『おぉ、ありがとう』
「…………」
『…………』
「…………」
『……あの』
いつまでも頭を撫でてくる相澤を、向は困ったような表情で見上げた。
「爆豪もさぞ嬉しいだろうな。自分の選んだ服を素直に着てきたら」
『いや、着て行ける服これしかないので許していただきたい』
「なんで急に。今までの服は?」
『ダッセェって言われたから…ちょっと…』
「……へぇ。ダサくちゃダメな相手に会うのか」
『公開処刑に遭うと言われたので』
「へぇ」
ぐりぐりと頭を撫でくりまわされ、髪がぐっしゃぐしゃになっていく。
向がジトっとした目で相澤を見ると、ようやく彼はパッと手を離した。
「おまえは、周りの目を引く容姿をしてるんだから、変に着飾らなくていいんだよ」
『いや、買いかぶりすぎだし着飾りすぎないのも問題かと』
テーブルに戻っていく彼につられて、向もまた向かい合った席に腰掛けた。
「買い被ってねえよ、客観的な評価だ」
『えっ』
「俺からしてみれば、ダサければダサいほどいい」
『なんなの、ダサいのが好みなの?』
「俺が手を出せるようになるまで、余計な虫がつかなくて助かる」
コーヒーを飲んで。
はっきりと、相澤は心情を言葉にした。
向はまた食事を喉に詰まらせて、ゴホ、ガハッ!と激しく咳き込んだ。
「大丈夫か」
『だっ、大丈夫、大丈夫…!』