第36章 1位の彼と私
『焦凍とだよ』
と何の気なしに答えてしまってから。
向はハッとして、爆豪から目を逸らした。
「……………………あ?」
『………』
「おいコラ、二人か?」
『………………』
「テメェは、俺に、クソ舐めプ野郎と遊ぶための服を選ばせてたってことか…!?そういうことだろオイ…!!」
『いや、違うよ、私が頼んだわけじゃないし勝己が選んでくれたのはありがたいけど私は頼んでないしそれに明日勝己と遊ぶ服も選んでくれたわけだし』
「明日はアホ面と切島もいるだろが!!!何俺の時間使って無駄なもん選ばせてんだテメェは!?」
『いや、そういうんじゃないし!会うって言っても1時間やそこらの話で…だからって……いや、勝己は関係なくない?そんな怒ら、怒りますよねー…それはそうですよねーー』
頭を鷲掴みにされ、向がアイスだけは死守しようと、荒ぶる爆豪から離れた方向へと腕を伸ばす。
『ほら、ただの報告というか本当、遊ぶっていうより会話する程度のものだからどちらかというと勝己の方が何となくデートっぽかったというかほら!大丈夫!』
「テメェ…おちょくんのもいい加減に」
ボト、と、爆豪の足に、コーンから落下したアイスが着地し、滑って地面へと叩きつけられる。
「『あ』」
その不愉快な感触に気を取られ、爆豪が向を掴む手を離した。
解放された向は片手で鞄を漁り、身を爆豪の方へと乗り出して、ティッシュで爆豪の足に触れた。
『ごめん、私のアイスどうぞ』
そう言って顔を上げた時。
『……。』
爆豪は、今まで見たことがないほど顔を真っ赤に染めて。
向と目が合ってしまい、焦った顔をした。
「…いらねぇよ、そんな不味いもん食えるか」
『えっ、自分で選んだのに』
「邪魔だ」
押しのけられ、キョトンとする向と距離を取り、彼は早口で言い放った。
「帰る、テメェはせいぜいクソ舐めプ野郎にその服で笑われてこい!!」
『信頼を揺るがすようなこと言わないでよ!恥ずかしいのこの服!?』
「バァカ、誰が教えてやるか死ね!!」
いつも通りの暴言を吐いて、急に背を向けて立ち去る同級生。
向は呆然とした後。
(…他にもっと)
照れるところ、あったのでは、と。
ぼんやりと彼の背を見送った。