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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第36章 1位の彼と私




干渉もせず。
遊びもせず。
付き合いもしない。
それは、そんなに悪いことだろうか。
そうしなくては一緒にいられないのだから、仕方ないことではないのだろうか。
昨日の出来事を思い出し、向が俯きがちに、後ろ髪を撫でた。
まだ微かに、彼が撫でてくれた指先の感触が、思い出せるような気がした。


「おい」
『えっ、はい』


気づけば、爆豪はアイスの移動販売車の前で立ち止まっていた。
向は頼むつもりがなかったのだが、店員に「お客様は何になさいますか?」と聞かれてしまい、もしや必ず1つ頼まなくてはいけないのかと、焦ってメニューを眺め始めた。
買っている客が一人でもいると、通行人の目には良い宣伝効果となるようで、すぐさまアイス屋の前に二、三人の客が並び始めた。
注文を聞かれるや否や、躊躇うことなく答えを返した爆豪が、じっと横目で見下ろしてくる。
その視線に気づかないふりをしてメニューに視線を走らせるが、背後から聞こえ始めた後列の客同士の話し声に気を取られ、なかなか決めることができず。


『……………あの』
「んだよ」


申し訳ありませんが、決めて、いただけませんか、と。
ひどく悔しそうに、低い姿勢で頼み込んでくる向に、爆豪はようやく顔を向け。
満足げに笑い、向の選択権を受け取った。


「お待たせいたしましたー!」


店員からそれぞれアイスを受け取って、ベンチに並んで腰掛ける。
ひと口ふた口食べたところで、爆豪が「少し寄越せ」といつものフレーズを口にした。
また「ピスタチオフレーバー」なんて当たりかハズレか人によって分かれるような注文をさせた爆豪は、自分はしっかり、王道のチョコアイスを食べている。


『…そろそろ行かないと』
「待ち合わせどこよ」
『…すぐそこ。だから、あの…手を離して』


会計後、またすぐ爆豪に繋がれた向の片手が、慣れない異性との距離感に手汗をかき始めている。
じんわりとお互い汗が滲んできたことに気づいたのか、爆豪が予想以上にすんなりと手を離してくれた。


「誰と」
『…ん?』
「誰と会うのかって聞いてんだよ…!」
『……え。さっきの待ち合わせ場所もそうだけど、質問してくれるなんて珍しいね』

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