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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第4章 怪しげな少年BとT




「向、おまえ発熱してるだろ」


聞いたことのない男子生徒の声に、一瞬だけ爆豪が振り向いた。
すると、向の両肩を支えながら、爆豪の背後に立っている轟と目が合った。


「「…………。」」


感情をその顔に乗せることなく、ただじっと爆豪を見つめてくる轟の目は、「なにやってんだ」と責めるような視線を向けてくる。
その叱責するような目つきにイラついたが、今はそんなことより緑谷の除籍を見届ける方が先だと考え、爆豪は轟を無視して、また背を向けた。


「向、歩けるか?」


背後から聞こえてくる彼の穏やかな声と、二人分の足音が、遠ざかっていく。
やけに耳障りなその音に舌打ちをして、それでも爆豪は、もう後ろを振り向こうとはしなかった。


『…ごめん、えっと……』
「焦凍」
『……名前は?』
「苗字では呼ばないんだろ。だから名前だけ答えた」
『……おぉ……賢い』


向は、グラウンドの校舎側に移動し、地面がコンクリートで塗装されている部分へと辿り着くまで、轟にもたれかかりながら移動させてもらった。
校舎の中まで行こうと提案する轟に首を横に振って、向は『あいた』と呟いた。


「横になってろ。おまえの順番が来たら、教えてやるから」
『……なんで?』
「…おまえの個性が気になる。あっち向いてホイってなんだ」


その前に除籍されると、わからないままさよならだろ。
そう言って、轟は段差になっているグラウンドの縁に横たわった向の頭の方に腰掛けた。


『…あぁ、アレ…聞いてたんだ』
「むしろ、聞いてなかった奴はいねぇだろ」
『そう?』


見上げる向と、見下ろす轟の目が合った。
彼は右手を向の額に乗せると、ひやっとした冷気をその大きな掌にまとった。


『冷たっ』
「…そうか」


朝から慌ただしかった今日1日を振り返り、轟はぼんやりと、空を見上げた。


(……すげぇ、静かだ)


向を支えながら、校舎に向かって歩く途中。
突如として個性を使った緑谷が、豪速球を空に投げつけたのを、振り返りながら見た。
まるで、オールマイトみてぇなパワーだな。
そう独りでに感じ、ほんの少しだけ。
緑谷の個性を、羨ましいと思った自分がいた。










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